水草を育てましょう!

水草レイアウトの人気はたいへん根強いものです。小さなインテリア水槽から60cmのコンテスト用、大自然を切りとってきたかのような大型水草水槽、さまざまな水槽と対面すると、それぞれに何かを感じると思います。我が家にも素敵な水草水槽を!今回は水草についてナビゲーションしていきましょう。

■よく質問されること
私たちが水草を販売する際、多くうける質問のなかに、水草が育たない、あるいは枯れる、そして水草にコケが付着するという問題があります。いずれも育成環境の改善が必要です。水草の取り扱いに問題があるケースも販売の現場では多く感じるところです。水草を美しく成長させるポイントはひとつではないので、順番に説明していきましょう。

■設備について
水草をきれいに育てる設備と、熱帯魚が健康に育つ設備には、共通するところと、変えたほうが良いところがあります。どんな設備の水槽に水草を植え込むかによって、水草の姿は変化していくのです。熱帯魚飼育セットからフィルター、ライトなどの設備をステップアップしていくアクアリストも多いです。

①底床について
大磯などの一般的な砂利から各メーカーがリリースしている様々な水草用底床、ソイル系とよばれる土など自分の管理にあったものを5cmの厚さを目安に敷きましょう。底床が薄いと水草が抜けたり、十分に根をはれなかったりします。手前を薄く奥を厚くして同じ長さの有茎水草を列に植え込むと頂芽が個性を主張して美しくレイアウトできます。底床を敷く前にラインヒーターなどをセットすれば、底床内の通気性や通水性を確保しやすく長期的な管理に向いています。販売されている砂利などのパッケージをみると中性とか、弱酸性といった表示がありますね。中性とはその製品が水槽内でなにも溶出せず、なにも吸着しなくて水質に影響を与えにくい性質であるということです。弱酸性とは底床の性能によりPhを弱酸性に傾けやすいものをいいます。カルシウムなどが溶出してアルカリにするサンゴ砂などは水草育成には基本的に向きません。

②照明について
水草育成用蛍光灯をはじめ、メタルハライドランプや水銀灯などを予算や管理、水槽の見え方によって選んでみましょう。水草水槽は一般に陽の当たらない場所に設置しますので、照明設備は昼と夜を人工的に作り出す装置であるといえます。1日8~12時間を目安にライティングしましょう。タイマーを使用すると良いと思います。朝寝坊しても電気は点いてくれますし、夜遅く帰宅しても消灯されていますので、照明時間をきちんと管理できます。コケが生えてきたから1時間減らそう、というのも管理のひとつですね。蛍光灯は4~6ヶ月で光量がおちますので交換しましょう。赤い水草をより赤く見せるランプや、ケルビン数の高いランプなどいろいろ試してみてほしいところです。同じ水景でも、ランプを換えると見え方や受ける印象はかなりかわってきます。夏の水温上昇対策で蛍光灯をリフトアップする場合は、水槽の深いところに光が届いていること、水草が健康かどうかを確認しましょう。

③フィルターについて
水槽という限られた空間では、水草の成長に不可欠な二酸化炭素がどうしても水槽の外に逃げやすい、という性質があります。ろ過装置で水を循環させたとき、水面を爆気させてしまうとさらに二酸化炭素が逃げます。上部式や、外掛け式、エアーポンプを使用する底面式、投げ込み式、及びオーバーフロー式は構造上水草育成に向きません。中心となるのは外部式や内部式であるといえます。外部式フィルターのシャワーパイプは水面下1cmで水槽の背面に当てるようにセットしましょう。内部式フィルターの出水口も水面下1cmでよいでしょう。

④CO2について
二酸化炭素は水草の主食であります。添加しなくても展開していく水草は『丈夫な水草』と呼ばれますが、ぜひ二酸化炭素を添加してほしいところです。茎の強度、葉の張り、ツヤ、美しさなどは格段にアップします。もっともポピュラーなのは74g入りの高圧ボンベを用いた添加方法で、拡散筒から放出される二酸化炭素の気泡が美しく、おすすめであります。ほかにもCO2ミキサーを使用することにより、ボンベ内のガスを無駄なく利用できる装置などもあります。最近では、各メーカーから色々なCO2添加装置が発表されていて、ボトル内で作ったCO2を水槽に拡散させるものや、拡散筒にタブレットを入れるとCO2が充満するものなどもあります。自分にあったものに出会っていただきたいです。添加の目安は、ライト点灯、CO2添加後3時間ほどで前景水草まで光合成をし、草体から気泡がでるくらいです。カウンターがある場合は、カウンター内を通過するCO2の気泡が、10秒間に10滴を目安に、増やしたり減らしたり調節すると良いでしょう。水草の種類によって要求されるCO2の量は異なりますし、植え込む本数によっても添加量は見きわめる必要があります。

■取り扱いについて
水草の取り扱いは水の中で行います。水を入れるボウルやバット、よく切れるハサミ、ピンセットは必需品です。有茎水草は葉のついている節の下5mmくらいのところをハサミでカットして1本ずつ植え込んでいきます。わざと葉の柄を少し切り残すと抜けにくいので初心者の方にはおすすめのテクニックです。株状の水草も1株ずつ植え込みます。購入時、根が長ければ、先端を少しカットすると植え込みやすいでしょう。有茎水草をカットするときは草体の三分の二は残すようにします。いきなり半分以下にカットしてしまうと、草全体の体力が低下するうえ、低くなった分、頂芽に当たる光量も少なくなり、枯れやすくなりますので注意が必要です。株状の水草は、引き抜いたり、根をカットしたりすると、一時的に根の成長が停止しますので、トリミングするときは、水草が受けるダメージを考えハサミを水槽のなかに入れ、水中でカットするようにします。購入した水草を持ち帰る際は、種類にもよりますが、水ごとパッキングしてもらったり、1種類ごとにパッキングしてもらうと良いので、持ち帰る時間とともに、お店の人に伝えると良いでしょう。販売の現場でよく見かけるのは、ポットやおもりのついた水草を購入したままの形で水槽に導入してしまう、ということです。束ねられている水草の内側には光が当たらず、枯れたり溶けたりしやすいのです。傷んでいる部分のトリミングなど、適切な処理をした草体を1本ずつ、1株ずつ植え込んでいくのが原則です。輸送中に草体の下部が傷むこともありますし、葉や茎が折れてしまうこともありますので、1本ずつチェックしながら取り扱いましょう。

■肥料について
有茎水草は葉から栄養を吸収する率が高く、液体肥料が有効であります。水草たちがその日使う養分をその日の朝、ライトを点けたときに添加するのが理想です。液体肥料のパッケージには1週間に○○ml添加などと目安が記載されていますが、水草100本の水槽と、水草1000本の水槽とでは要求される肥料の量がちがいますので、毎日観察しながら調整するのがよいでしょう。肥料不足の頂芽は色がうすくなる傾向がありますが、多くの液体肥料は即効性があり、ある程度ならば薄くなっても復活します。液体肥料の過多はコケの発生の原因となりますので、1日に必要な液体肥料の量を見きわめるには、少しずつ入れては観察するのが良いでしょう。株状の水草は根から肥料を吸収する率が高く、底床肥料が有効であります。水槽セット時に底床に施してから砂利を敷く方法や、株の根元にピンセットで追肥する方法があります。やはり、肥料不足になると新葉の色が薄くなりますが、底床肥料にも即効性のものがあるので、上手に利用しましょう。

■水かえについて
熱帯魚の管理と同じように水草育成水槽においても水かえはきわめて重要です。水道水には多くの二酸化炭素が含まれており、新水が入ることによって水草は代謝がよくなり活性化し、いきいきとした姿をみせてくれます。仮に、二酸化炭素を添加しない水槽に外部式フィルターと適切な照明設備をし、毎日半分の水を交換し肥料を与えると、多くの水草は美しく展開していきます。水草たちは水かえが大好きなので、水かえ作業はライトを消す前よりも、ライトを点けてまもなくの時間に始めると良いといえます。なにより水かえ作業はコケ発生防止の第一歩なので、楽しんで作業していただきたいです。以前も触れましたが、マンションなどの貯水タンクに汲み置かれた水は、原水に比べて溶存二酸化炭素は低く、Phは上昇している可能性がありますので注意していただきたいです。上階の水道水と1階の原水の水質を比較するのもよいと思います。

■コケについて
水草が健全に成長する条件と、コケがはびこる条件は反対方向であります。コケがはびこる環境に水草を植えてもうまくいくことは少なく、逆に水草が状態良く育っている環境ではコケは生えにくいのです。コケが発生するのは、その水槽にコケが増えるのに十分な養分があることを示します。水草が養分を効率よく吸収すればするほどコケの生える余地は少なくなるのです。効率よく養分を吸収させるためには、照明、CO2、肥料のバランスの見きわめが大切で、3つのうちどれが欠けても崩れやすい環境となります。コケ発生の原因はひとつではありません。

照明(ランプの本数)及び照明時間の過多あるいは不足。

水かえの不足。

底床やフィルターの目詰まり。

エサのやりすぎ。

魚の入れすぎ。

肥料の与えすぎ。

ろ過能力の弱すぎ、強すぎ。

ひとつずつチェックして理想的な水槽ができたところで、Ph、硝酸塩をはじめとした水質や、管理のデータを記録しましょう。コンディションの悪いときと比べると、数値が異なるポイントに問題解決のヒントや適切な対処法がみえてきます。毎日データをとることができれば、水槽内でなにが起こっているか、把握できることと思います。

■レイアウトについて
育てるのが得意な水草に出会って、トリミングの仕方やタイミングなどを自分のものにしていただきたいです。アマゾンチドメグサやウィステリア、ロタラ、ミクロソリウム、アマゾンソード、ハイグロフィラなどでコツをつかめば、多くの種類に対して応用がききます。
品種によって取り扱い方が異なることもテクニックとしてほしいのです。特定の水草についてソイルのほうが良いといったことであるとか、この肥料が有効であるといったことは、ぜひ肌で感じてほしいのです。現在ではいろいろな情報が入手可能でありますから、自らのテクニックとしましょう。レイアウトにはいろいろな世界があり、ダッチアクアリウム、日本のネイチャーアクアリウムなどがその代表となっていますね。観賞魚のイベントなどに展示される水槽も新しい何かを提案するものが多く、そうしたイベントにもぜひ足を運んでいただきたいところです。個性や性格が出てしまうのがホビーとしてのアクアリウムの良いところで、自分だけの、あるいは自慢の水槽づくりに励んでほしいのです。好みもあると思いますが、隣り合う水草の組み合わせは無限です。成長速度の近いものを隣り合わせたほうが管理しやすいと感じる場面や、レイアウトのいちばんの見せ場を何にするか迷う場面、うまく育てるために試行錯誤する場面、どのような設備にしようか悩む場面などは、アクアリウムが趣味でよかった!と思う贅沢な時間で、お店に立つ人間として応援したいと思います。良いショップと良いコミュニケーションがとれれば、ワンランク上の水槽が完成することでしょう。卵型の葉のウォーターバコパを生かすには、隣りに細長い線型葉のエイクホルニアか、はたまた赤いレインキーか、後景は?前景は?こんな良い趣味、ほかにないと思うのですが‥。

■水槽管理、メンテナンスフィッシュについて
水草水槽を美しく仕上げるためには日常の管理が不可欠であります。照明時間、CO2の添加量、施肥量、水かえの量、ろ過槽の管理など、手をかければ水草たちは美しい姿で応えてくれるはずです。タイマーを使用して照明時間を決定したら、電磁弁なども利用し、CO2も自動供給できるシステムをつくりましょう。生活が不規則になりがちな現代人にはなくてはならないアイテムです。毎日異なる量の照明やCO2では水草は美しくなりません。液体肥料は入れた量をメモするときちんとした管理ができますし、底床肥料は底面10cm角あたり何個と決め、入れた日をメモしましょう。

水槽内を美しくキープするのに協力してくれる頼もしいタンクメイトも活用すると良いでしょう。オトシンクルス、フライングフォックス、ヤマトヌマエビ、石巻貝、ブラックモーリー、ペンシルフィッシュなど愛嬌のある仲間たちが多く、健気にコケを食べる様子が見られるでしょう。

■コンテストについて
日本はいまや水草レイアウト先進国となって、業界をリードしています。ショップ主催のコンテストや、観賞魚のイベント会場、世界レベルのコンテストまで、だれでも出展できる場が増え、その態勢も整い、さらなる発展が期待されるところです。写真などが紹介される機会も年々増えており、参考にしていただきたいです。水草たちが状態良く育ち、自らの個性を主張し水草同士が競い合っているような素材を用いて、レイアウトづくりにチャレンジしてほしいのです。光合成をしている水草たちの、ためいきが出るような美しさをまわりのみなさんにつたえましょう。