ソイルについて

アクアリウムの土台としてソイルを用いる愛好家は爆発的に増加しました。ソイル系とよばれるカテゴリーのもの、ソイルとセラミックの中間的な性質のもの、多孔質なもの、エビ専用、水草専用、粒の大きさレギュラータイプ、パウダータイプ・・ソイルの色まで種類が増え、じつに多くの製品が出回るようになりました。
「敷くだけで弱酸性の軟水がキープしやすいのでアピストグラマに向いています。」
「エビたちは、底砂クリーナーを用いた水かえや、水草を引き抜くときに生じる老廃物や有機物の舞い散りを嫌うので、セットしたらリセットするまで敷いておけるソイルを使います。」
「この水草の根はたいへん細かくて密なんです。大磯よりもしっかり根を張れますし、底床肥料の吸収もたいへん効果的です。」
「ソイルから緩行的に有機栄養素が溶け出しますので、何も溶け出さない砂利より二枚貝は生活しやすいでしょう。」
などと魅力的なうたい文句で、アクアリウム業界でも瞬く間にヒット商品となり、短期間のあいだに広まっていきました。

『ソイル系』とよばれる底床素材の登場によって、生体の「飼育しやすさ」は飛躍的にあがったと言っても過言ではありません。原料となる土に含まれる腐食酸が水槽内で有効に作用し、弱酸性の軟水という環境が作りやすくなり、生き物たちの生息環境を再現する近道ができたのです。南米小型カラシンやドワーフシクリッドに限らず、水草育成、小型のコイの仲間、ベタ、グラミィ、レッドビーシュリンプなどを飼育するにあたっては、革命的な製品であります。

ソイル登場以前は…①ピートの使用 ②シーアーモンドの葉の使用 ③ブラックウォーターのような琥珀色の水質調整剤の使用 ④pH降下剤の使用 ⑤イオン交換樹脂の使用 ⑥R/Oフィルターの使用 など好みの水を作るのに、大変な時間と手間が掛かりました。もちろん現在でもソイルとの併用は多く見られます。しかしセットするだけである程度の水質レンジに落ち着いてくれるうえ、水質の急変を避けることができるソイルは、水質安定の面で広く用いられるようになったのです。

ソイルはビギナーからベテラン、プロ、ブリーダーなど実に多くのアクアリストに使われるため、その使われ方も様々です。

「弱酸性の軟水」といっても、pH5.5と6.5、そしてKH1とKH3とでは別世界ですし、GH3とGH5とでは管理の仕方もかわってくるでしょう。情報を得ることは大切ですが、自分の目で確認することや、流されないスタイルを確立することが大切だと思います。

普通の60cm水槽に人気ブランドのソイルを敷いて普通の管理をしています!
ここで感じるのは「普通ってなんだろう?」ということです。
お店に立ってビギナーからハイアマチュア、熱血アクアリストまで多くの方々に話を聞きますと「普通ってなんだろう?」としばしば考えます。自分の水槽が「一般的」「普通」と思っていないほうが生き物たちにはやさしいのではないか?そんなふうにも思います。例えば部屋に10本のレッドビーシュリンプ水槽を持ち、管理を行っていくうえで10本とも同じ管理をする、というのは無理な話です。毎日水槽を観察・チェックし、取るべき処置を決め、10本それぞれに別々の管理、最善の処置を施してあげることが飼育者のつとめです。ソイル部門、シュリンプ部門、南米ドワーフシクリッド部門など、ソイルを扱う愛好家のあいだでは、きわめて緻密で計画的な管理、飼育がなされていて、現在の人気を支えてくれています。
自分のソイル水槽が1番!というかた同士のソイル議論はとても熱く、格闘技のようでもあります。ソイル徹底研究、みなさんもいかがですか?やはり一括りに“弱酸性・軟水”ということではなく、例えばKHが5以下のときには夜間のpHを測定してみることなどが水槽管理、水質管理、生体管理のカギを握っているといえます。結果やデータはメモしておきましょう!

さて、数年前より各地で取り上げられている「白濁り問題」についてです。
ソイルは自然の土を直径2mmから4mmほどの粒の形にして焼き固めるものが一番人気です。メーカー側で焼き上げ時間や焼き上げ温度を一定にしても、素材となる土は自然のものですので、土自体の質や含有物によって品質には目に見えにくい差があったものと思われます。特殊焼成、軟焼結製法、焼成加工・・メーカーによっていろいろな言葉がつかわれており、製造方法は企業秘密やシークレットな部分が多いですが、使用にあたってはpH、硬度など目に見える部分はしっかりと確認、吟味をし、耐久度、上手な使用のポイントなど目に見えにくい部分はショップともよく相談してみてください。

水槽にソイルを敷き、注入した最初の水がアルカリ性だと、フミン酸などの有機成分が溶け出しやすく、観賞にたえないほど白く濁ったり、黄ばみや茶ばみが出たりしてしまいます。「まだ生体を導入していないのに水かえばかりしているよ」などの声が多かったのも事実です。
マンションや集合住宅に設置されている貯水タンクを通って出てくる水道水についてですが、筆者の暮らす東京ではpH7.3~7.6ほどです。地上1階の蛇口は水道管に直結しておりこちらは6.9~7.1です(毎日同じとは限りません)。水は貯水タンクに汲み置かれることによって、水中に含まれていた二酸化炭素が逃げます。逃げた分だけpHはアルカリに傾きます。貯水タンクが大きく、配管の長い高層住宅ほど、この傾向は強くなります。pH6.8の水の水を用意することや、アルカリの水を7.0にする作業をすることや、静かな注水作業をすることで、白濁防止の第一歩としましょう。
余談ですが、貯水タンクの清掃や、揚水ポンプの点検・交換などの日、その翌日の水は使わないほうが良いでしょう。金属、サビ、洗剤、消毒薬など招かざる成分を持ち込む可能性があるからです。5ミクロンのプレフィルターを通すと一瞬で白いコットンが茶色になってしまうほどですので、特に集合住宅にお住まいの方は、住宅管理の案内はチェックしてください。

ソイルの敷き方についてですが、

①空の水槽にソイルだけを敷く

②底床プレートを敷き、保温器具を設備してからソイルを敷く

③5mmほどの粗目の素材を敷いてからソイルを敷く

④底面式フィルターを設備してからソイルを敷く

⑤粗目ソイルと細目ソイルを重ねる

など多くの方法があります。

ソイルの上には水が張ってあって、全ての水がソイルにのしかかっている、と考えますと時間の経過とともにソイルはぎゅっとかたくしまっていくことになります。通気性、通水性はダウンしていくわけです。セットして3ヶ月から6ヶ月をかけて、底床の状態、水槽で生活する生き物たちの状態、底床内部の微生物の状態などを最高の状態になるように想像して水槽を作っていきましょう。

ソイル粒子の耐久性、水の濁りの問題、水質に関わる問題など、各メーカーで研究がすすみ、新製品が続々と登場しております。メーカーのクセや個性をつかんで、自分に合うものを探ったり、数種をブレンドしたり、水槽の底面をブロック分けして別々のソイルを使用したりと、底床づくりも楽しみのひとつにしてください。


水の張り方についてですが、
いかに静かに、ソイルを舞い上げることなく注水できるかが最大のポイントです。おすすめは霧吹き方式です。飼育水になる水を霧吹き器に入れ、まずは霧吹きをすることでソイル全体に水を染み込ませていき、濁り防止を狙います。
注ぐ水がソイル面に穴をあけてしまうことがないように、平たいお皿、お茶碗、発泡スチロール、板、ビニール袋、細目のネット、自分の手、ガラス板、プラケース、ジョウロなどのアイテムが使われます。まずは水槽の三分の一から半分まで水を張って様子を観察します。白く濁っているような場合は、もったいないですが静かに排水し再び水を張り、クリアな水を目指します。

水を張ったら、浮遊しているソイルやゴミは細目のネットで丁寧にすくいます。敷いたソイルに含まれている空気を抜く作業を行う例も多く見られます。ピンセットなどで穴を開けるように底床内の空気抜きをするのです。

使用後のソイルについてですが、
多くはプランターや花壇に再利用されているようです。翌年の花姿を見ますと、大きく立派な花をつけ、色彩も鮮やかに、ツヤとハリのある花が期待できます。茎や葉の組織もしっかりとしております。葉脈1本1本がくっきりと主張するかのようなハリの良さは、微量元素やミネラルの力が目に見える瞬間ですね。

ゴミとして廃棄する場合は各自治体のルールを守って処理してください。