ソイルQ&A

ソイルについて、お店でよく受ける質問について記しておきましょう。

質問1)
ソイルの交換時期の目安について教えてください。

A、かなりのベテランキーパーや、ショップの店員さんをも悩ませる問題だと思います。おそらくプロブリーダーの方々ですら24時間常に頭のどこかで考えていらっしゃる問題ではないかと思います。各メーカーからリリースされている製品の使用説明書にある「粒子が崩れてくるため1年で交換」「6ヶ月間は機能が持続します」「2年間崩れません!!」などはあくまで一般的な目安であります。お店に立っておりますと、6ヶ月のかた、8ヶ月のかた、12ヶ月のかた、15ヶ月のかた、いろいろなお客様に出会います。ソイルの交換時期はケースバイケースで、同じ大きさの水槽でも、飼育する生き物の種類、数、水草のコンディション、ろ過槽の立ち上がり具合、日常の水槽メンテナンス、エサの与え方など多くの要因によって目安通りにいくとは限りません。

粒子の崩れ具合はもちろん外見で判断します。同じ製品でも水槽の大きさ、深さによって崩れ具合は同じでありません。水槽の深さ、水量、水の流れ方、ろ過の方法などに影響を受けます。崩れきってしまったソイルの交換は重労働でリセットに時間がかかります。好きではじめたアクアリウムであるのにソイルの交換がひと仕事になってしまいますので、水槽手前や側面のソイルの状態などを毎日チェックして、交換用のソイルの手配をはじめとする準備は早めに動きだしましょう。

弱酸性の軟水に仕上がるという水質的な効果の面から見ますと、

①pHが弱酸性のレンジから中性寄りになってきたとき(溶け出す酸がなくなりはじめた時)、あるいは硬度があがってきたとき

②そしてpHが下がり過ぎてしまうとき(底床が熟成しすぎ、ソイル部分の通気性や通水性がそこなわれている時)も交換時期といえます。

毎日pHや硬度を測定し記録しておくにこしたことはありませんが、例えば・・セットして3ヶ月ほどで、水槽の調子が良い!と判断したときに各水質項目を測定しメモしておきます。時間が経過し、同じ項目を再び測定し、結果の数値を比較してみてください。数値に決定的な違いが見られ、そのことに対する水質改善処置にも効果がみられなくなったときはすみやかに交換・リセットをしましょう。

ソイルの交換は、早めに行います。不経済!と思われるかたも少なくないと思いますが、交換が遅れると、水槽で生活する生き物たちのコンディションが良好でなくなったり、死活問題に発展したりします。そうなる前にソイル交換、いわゆるリセット作業を実施しなければなりません。

また、8ヶ月目に産卵や育児や個体の選別が終わり、生体の移動が済んだのでリセット!という気持ちの良い交換時期もありますね。

交換時期は自分で決定しなければなりません。見きわめがきわめて重要です。



質問2)
粒が細かいソイルと粗い物がありますが、どのように使い分ければいいでしょうか。

A、細目のソイルは小型水槽や水草の育成に向いています。ソイルはもともと2~4mmの目のものが発売されました。レッドビーシュリンプの人気の高まりや、それにともなう小型水槽の広まり、そして育成には一定の環境が必要な魅惑の水草、いわゆるマニアックな水草、育成が難しい水草、根が命の水草にチャレンジする熱~いアクアリストが増えたことで、いろいろな粒子サイズのソイルが入手できるようになりました。粒子のサイズだけでなく、インテリア性の高い水槽や、こだわりの1本のためにソイルの色も吟味されるため、華々しく次々と新製品が出てきています。

幅60cm以下の小型水槽には、やはり細目のソイルのほうが見た目のバランスも良くおすすめです。大きな水槽に比べて、水圧による底床の硬化や目詰まりが問題になりにくいこともおすすめのポイントです。ピンセットで水草を密に植え込んでいく場合も細目が向いています。稚エビたちの生活にも細目がやさしいでしょう。細目のソイルのほうが粗目よりも高価に設定されているメーカーもありますが、かわいい命のためです、がんばりましょう。

60cm以上の水槽を使ってどっしり落ち着いた環境を作るには、2~4mmの目のソイルが良いでしょう。細目だと底床のしまりや目詰まりが先行しがちで、交換時期がはやくなりそうです。底面にプレートを入れて保温し底面からの熱対流を期待するケースや、底面ろ過を用いるケースにも粗目が選択されます。

ひとつの水槽に細目と粗目、両方を使うケースも多く見られます。粗目ソイルの上に細目をかぶせ、水草レイアウトを長期にわたって維持しようとする場合や、粗目ソイルのエリア、細目ソイルのエリアをブロック分けして植栽する水草に、より有効な底床を提供しようとする場合などです。この後の質問4でまた詳細に触れますが、水草の種類によって粗目と細目を使い分けることがあります。水槽を上から見たときに、水槽前面を一辺とした三角形に細目、両奥のエリアは粗目、などと計画的にレイアウトするこだわりの水槽などもおすすめです。ソイルの色や粒子サイズをちがえて区分けするのも一考に値します。また、異なるメーカーのものを比べて観察することや、複数の水槽を並べてのソイル比べをすることで、きっと自分にピッタリの製品が見つかることと思います。

質問3)
ソイル交換方法のポイントとコツを教えてください。

A、ソイルは交換しなければならないタイミングを逃がすと、愛好家のあいだで「崩壊」とよばれる状況を招く危険があります。生体の突然の大量死、1日に少数ずつポツリポツリと死んでいく・・などの現象がこれです。

複数の水槽を所有し、A水槽をリセットするにあたり、新規のB水槽に生体を移す場合は生体導入時、水槽スタート時と同様、水合わせ作業をじっくり行うことができて、ソイル交換も思い切ってできることと思います。問題は水槽がひとつの場合でソイルを交換しなければならないケースです。水槽で暮らす生き物たちにとってダメージを最小限におさえてあげる方法を探ってみましょう。

①ろ過器、照明、ヒーターなどの電源をOFF。
老廃物が舞い散ることなどを避けるためろ過器は止めて作業を始めます。人間は明るいほうが作業しやすいですが、暗いほうが生体は静かになりますし、消耗も少ないです。衝突、スレ防止の意味でも照明はOFFにします。ヒーターを空気中で通電させないようにこれもOFFです。

②飼育水を上のほうから静かにとっていく。
飼育水の9割以上の水をバケツやビニール袋などにとっておくことで生体のダメージやストレスをおさえてあげたいのです。ホースで吸い出すにしても、ボウルでくみ出すにしても、クリアな水をストックしたいので作業は静~かに行います。

③水を半分ほど抜いた時点で生体をすくう。
生体をすくうのには半分くらいの水位が良いでしょう。やはり舞い散りに注意し、そっとすくい出します。

④水草の撤去
生体の次は水草にとりかかりましょう。有茎水草は引き抜かずに底面すれすれのところでカット。引き抜くとソイルや泥や老廃物が舞ってしまいます。またすぐ使えるようにトリミングを施しておきます。根張りの良い株状の水草を引き抜くのは、限界まで水を抜いてもう濁ってもOKな態勢になってからにします。

⑤ソイルの撤去
地道に砂利スコップですくう、新たに水を張って水ごと吸い出す、いずれにしてもすべての粒子を出す作業です。水槽はよく洗いたいのでがんばって除去です。

粒子の大きなものだけをアミで濾すように取り出し、次の水槽に種ソイルとして用いるかたも多くいらっしゃいます。生体だけでなく、バクテリアなどの小さな命に対してまで思いやりをもっての作業となります。

⑥リスタート
水槽や飼育器具の消毒にたいへんな労力と時間をかける熱烈な愛好家も少なくありません。熱湯や漂白剤の使用は自分の責任で、納得のいくまで。が原則になります。消毒、滅菌後のカラ回し試運転に数週間!というこだわりを持つアクアリストは、その間水槽のイメージを沸々と募らせているのです。

さて水槽をよく洗ったら新しいソイルを敷きましょう。これより先の作業はこのあとの質問5と重複する部分がありますのでそちらで触れることにしましょう。