コリドラスを飼育しましょう!

コリドラスを飼育しているアクアリストはかなり多いと思います。愛嬌のある生態にハマり、繁殖やコレクションをするキーパーから、飼育しやすい入門魚として、あるいは水槽のメンテナンスフィッシュとして、人気と地位が確立されています。今回は愛すべきキャラクター、コリドラスについて考えてみましょう。
■コリドラスを飼育するにあたって
コリドラスはナマズ目カリクティス科コリドラス亜科コリドラス属と分類されています。コリドラスという名前には、皮をかぶったナマズという意味があり、数百種にのぼるといわれる彼らは広く南米に分布します。掃除屋さんとしてのイメージが強い人も多いと思いますが、ナマズの仲間なのでたいへんな大食漢であります。まずは理想的な飼育環境から見ていきましょう。底モノともいわれる彼らは、底砂への依存度がとても高いです。底床の環境は常に清潔に保つことを心がけましょう。定期的に底床クリーナーによって泥抜き作業をしましょう。クリーナーを差したときにクリーナーの形が砂利に残ってしまうような環境は、汚れによって砂利が目詰まりしていることを示します。良好なコンディションをキープするためにも水かえのときには上澄みでなく砂利の中から積極的に汚れを取り除いてあげるようにします。底床面積はなるべく広くとってあげたいので、砂利が見えなくなるような本格的な水草レイアウト水槽や、ソイル系の底床は基本的に向きません。砂利は目の細かいものが良いでしょう。粗目の砂利は3対あるヒゲを傷つけることもありますし、細目のほうがパワフルにエサを探る様子が観察できます。ナマズにとってヒゲはきわめて重要な器官で、粗目の砂利や詰まった底床で飼育を続けますと、とがっていなければならないヒゲの先端が丸みを帯び、ときには短くなってしまい、コンディションを崩す原因となります。砂利をいっさい敷かないベアタンクでの飼育例もありますが、生息環境の再現という意味をこめて砂利の使用をおすすめしたいところです。原産地の水質は地域によってすこし異なり、弱酸性から弱アルカリ性を示しますが、Ph7.0の中性を目安に管理をしましょう。水温は低温を好む一部の高級コリドラスもいますが、24から26℃でOKです。入手したときに水温が何度であったかを確認するとよいでしょう。日本の冬がシーズン最盛期となるコリドラスにはヒーターなどの保温器具が欠かせませんが、主流である水槽用のヒーターにはぜひカバーを取り付けてあげたいものです。人の手で触っても熱いと感じる通電部に彼らがのってしまうことも少なくなく、ヒーターカバーは必須アイテムといえます。時折、縦に取り付けられているヒーターを見かけますが、危険です。砂利に埋めることも基本的にはしないほうが良いでしょう。ヒーターは必ず横に寝かせて使用します。飼育スタイルはバラエティに富んでいて良いでしょう。趣味的要素がたくさん入ってくるほうが楽しいです。ビギナーによる混泳水槽からマニアックでディープな世界のスタイルまで、百人百様と思われます。適度な水流をつくるためのパワーヘッドなど設備の選択、エサの選択と、観察しやすいレイアウトなどなど、飼育していてこれほどバラエティ豊かに楽しめる魚種もないのではないかと感じるところであります。
■コリドラスのエサ
コリドラスは雑食性がつよく、何でもよく食べます。掃除屋さんとして有名な彼らでありますが、下に落ちるほどの量のフレークフードや顆粒状フードを投与することは水槽環境の悪化に直結します。イトミミズ、赤虫、低層魚用の沈降性タブレットフードなどをバランス良く給餌しましょう。1回に与えるタブレットフードの量は、1時間ほどで食べきる量(個数)とします。匹数によって見きわめが必要です。十分摂餌できた個体の腹部は膨らんで見えます。多くのメーカーからリリースされているタブレットフードは、各種ビタミン類が配合されています。体表粘膜に影響するビタミンA、炭水化物の代謝に関与するビタミンB1、タンパク質と結合して呼吸回路に関与するビタミンB2、骨格の形成に関与するビタミンC、性機能に関与するビタミンEなどであります。水槽という限られた空間で健康に生活してもらうためにも、マルチビタミン配合フードの使用をおすすめしたいところです。いつも同じポイントにエサを落としてあげると、魚たちが集まってきて愛嬌たっぷりに食べる様子が観察できます。コリドラスやプレコ用のタブレットフードはおいしいらしく、混泳魚がもっていってしまうこともしばしば観察できます。また、自由遊泳開始まもない稚魚が群がるように摂餌できる構造のものもあり、便利に使用しているキーパーも多いのです。
■コリドラスの繁殖
パレアタス、アエネウスなどの入門種や、パンダ、ステルバイなどの人気種は、水槽内で繁殖させることが可能で、ぜひとも挑戦してみてほしいです。産卵用水槽として、45cmから60cmケースを用意する方法と、卵を取り出し人工孵化させるために簡単な設備の小さいプラケースを用意する方法が知られています。メス1匹に対してオスを2~3匹の組み合わせでの成功例が多いです。成熟したメスはまるまる太ってくるのに対し、オスはスレンダーで容易に見分けがつくようになります。オスがメスを追尾するようになるのが、産卵に至る兆候です。メスの前でディスプレイするオスの様子を観察できることもあります。やがてオスはメスの前で横たわるような格好になります。メスはオスの排泄口に自分の口を近づけて放出された精子を口に含むことが知られています。雌雄がアルファベットのTの字の格好になることからTポジションとよばれています。精子は瞬時にメスの体内を通過し、腹ビレに挟みこまれた卵に受精するのです。高い受精率を保つためにこのような神秘的な産卵方法が選択されたのでありましょう。この作業を繰り返し、50個から100個ほどの卵を産みます。卵はガラス面やアマゾンソードなどの水草に産みつけられ、付着することが多いです。産卵が終了したら、親を移動させ稚魚育成水槽とするか、卵を親指の腹でそっとプラケースに移し、エアレーションします。水温25℃のとき2~3日でふ化します。ふ化後1~2日で腹部の卵黄の栄養を吸収し、自由遊泳に入ります。泳ぎ出した稚魚にはふ化したてのブラインシュリンプや稚魚用フードをスポイトで与えます。2ヶ月で2cmを超えるほどの大きさに育てましょう。その頃にはすっかりコリドラスの形になっていて、たいへんかわいいものです。
■コレクション性について
毎年といってよいほど次から次へと新しいコリドラスが紹介されてきています。まだ名前が決まっていないspモノ(species:~の1種)も多いです。どれも魅力的な品種で目移りすることでありましょう。ショップで目と目が合ってしまったら、もう飼育するしかありません。すでにいっぱいで飼育しきれないのにもう1匹、さらに2匹と、欲しくなってしまう魅力があるのです。コリドラスの誘惑に負け、自宅をコリドラスの館にしてしまうアクアリストも少なくありません。高級コリドラス、あるいは珍コリドラスというジャンルも存在し、コレクター心やマニア心をくすぐっています。個性的なゴッセイ、夢にまで見たボエセマニー、素晴らしいフォルムのパラレルス、俺のアッシャー・・。自慢のコリドラスとなるでしょう。いろいろな種類に挑戦してみてほしいです。
魅力あふれるコリドラスを脇役としてではなく、堂々主役として、本腰を入れて飼育してみてはいかがでしょうか?