店長日記

ソイルQ&A その2

2010年07月19日

質問4)
水草水槽を作るときに、水草の育成にソイルが効果的と書いてありますが、肥料などはあまり必要ないのでしょうか。

A、肥料の与え方は大きく分けて二つあります。ひとつは液体肥料を水中に投入する方法、もうひとつは固形肥料を底床に埋め込む方法です。(液体肥料を底床に注入する方法を採用する愛好家もいらっしゃいます。)液体肥料は主に有茎水草に用います。有茎水草は葉から肥料を吸収する能力が高いからです。草体の成長にとって根の存在や役割がウェイトを占めない品種には液体肥料が有効です。
株状の水草、アマゾンソードに代表されるエキノドルスの仲間、クリプトコリネやニムファの仲間、そして有茎水草でも根を盛大に張る品種(ラージリーフハイグロやジャイアントアンブリアなど)は、葉だけでなく根からも肥料を吸収しますので、植え込んだ水草の根元に固形肥料を埋め込んであげます。根が底床肥料に触れたその瞬間がわかるほど水草は見違える姿に成長していきます。

市販されているソイルには、水草の成長に必要な栄養素や微量元素が含まれているものや、有害物質の吸着効果をうたったものなど様々な製品がリリースされておりますので、それぞれ確認が必要です。
今回肥料とソイルの関係について考えてみましょう。ソイルが水草に向くとされる要因のひとつに、ソイルの「肥料のキープ力」が挙げられます。いかに底床肥料を閉じ込めておいて水草の根が吸収しやすい状態にキープするか、ということです。例えば、水槽にビー玉を敷き、その中に底床肥料を入れた場合、肥料はキープされずに流出しやすいですね。粒子の大きい底床は固形肥料のキープ力が低いということです。その点ソイルは固形肥料をがっちりキープし、育成難易度の高い水草にもチャレンジしやすいです。水草育成やレイアウトに力を入れた水槽に好んで細目が用いられたり、粗目のソイルの上に細めのソイルをかぶせたりすることは、このようなポイントもふまえてのことです。

肥料の必要性についてですが、水草がどのくらいの肥料を要求するかは品種によって異なります。控えめな量で美しく新葉を展開する品種もあれば、多くの肥料を与えないと上手に育成できない品種もあります。光や二酸化炭素も大切ですが、ソイルと底床という点で、施した固形肥料の量はきちんと把握しておく必要があります。たとえば水槽の俯瞰図に肥料を施した場所や量、日付をメモする方法や、5cm角のエリアに2個!とか10cm角のエリアに5個!といった具合に量を調節できる方法をとり、きちんと管理をすると良いでしょう。

質問5)
ソイルをはじめて使用する時、気をつけることは何かありますか。ソイルを使用しない方がいい場合なども教えてください。

A、
★ソイルを敷くとき
これからはじめる水槽、ワクワク感やハイテンションと共に計画性をもってのぞみたいものです。ソイル導入時に多くの愛好家が注意するポイントはなるべく静かに、ソイルが舞い上がらないように、ということです。レイアウトで岩や流木を用いる場合、ソイルを敷いた後から配置をすると濁りの原因となることもありますので、ある程度の位置に配置をしてから少しずつソイルをいれてレイアウトを作っていく方法がとられます。粗目と細目を併用する場合にも計画性が必要ですね。手前のソイル厚4cm、奥7cmなどという厚さやソイルの量もチェックしましょう。水を入れる前に流木や岩の上にのってしまったソイルの粒子をハケや筆で掃って整える念の入れようもソイルの世界ならではのものです。

★水を入れるとき
この後の質問6・水の濁りの問題と重複する部分が多いポイントです。いかに静かにソイルを舞い上げることなく注水できるかに全力をそそぎます。飼育水になる水を霧吹き器に入れ、まずは霧吹きをすることでソイル全体に水を染み込ませていき、濁り防止を狙います。注ぐ水がソイル面に穴をあけないようにするために、みなさんじつに多くのグッズを使うようです。お店でお客様にちょっとインタビューしてみただけでも、平たいお皿、お茶碗、発泡スチロール、板、ビニール袋、細目のネット、自分の手、ガラス板、プラケース、ジョウロでガラス面に当てて・・とみなさま自分の作業しやすいグッズを使っているようです。まずは水槽の三分の一から半分まで水を張って様子を観察します。白く濁っているような場合は、もったいないですが静かに排水し再び水を張り、クリアな水を目指します。

水を張ったら、浮遊しているソイルやゴミは細目のネットで丁寧にすくいます。敷いたソイルに含まれている空気を抜く作業を行う例も多く見られます。ピンセットなどで穴を開けるように底床内の空気抜きをするのです。

★使いはじめた日をメモ
管理の第一歩です。ソイルをリセットするまでの日数を確認できます。経験、データ、実績を積むこともアクアの道です。水を張ってからは、コケを発生させないように、成長の早い水草(マツモ、ハイグロフィラ、アンブリアなど)をスターティングプラントとして用いるのも手です。水槽環境が安定し、ユニット全体が軌道に乗るまではたいへんですが、コケ退治はもっとたいへんです、がんばりましょう。

★粒子の様子を写真に撮影しておく
定期的に同じポイントで観察記録をつけ、目に見えるようにする愛好家も多いです。

★水質測定
スタートからリセットまで、水質検査も重要なポイントです。pHがどう変動していくのか、硬度がどんなペースで上がっていくのか、夜間はどうなっているのかなど、測定結果から対処方法のきっかけをつかむ場面も多いです。

★水温
まずは同じ温度の水を入れることが重要です。通常時の水温より高い水温の水(お湯)や低い温度の水は入れないにこしたことはありません。微生物の死滅にもつながります。「同じ温度」と「だいたい同じくらいの水温」とでは結果も異なるでしょうし、水槽や生き物に対するこころがまえや実際の水温確認など管理のきめ細かさの問題となりましょう。水温と並んで水質(特にpH)もポイントです。使用する元の水がアルカリ性だと、セット初期にソイル内の有機成分、フミン酸などが水中に溶け出しやすく、水に色がついてしまったり、白く濁ってしまったりする原因となります。(自然の土が原料のソイルですから、もちろんそうなるとは限りません。)

★魚病薬の使用
質問にソイルを使用しない方がいい場合とありますが、ソイル水槽に魚病薬は使用しないのが原則です。生体を病気にはさせられない状況が続くわけで、トリートメントの済んだ魚を本水槽に導入することや、日常の管理を怠らないことが重要です。もちろん底砂内をパワフルに索餌するコリドラスや底床への依存度の高いプレコやドジョウの仲間、底砂を掘りテリトリー(縄張り)を主張するシクリッドなどもソイルには不向きといえます。

観賞魚用の砂利や底砂にはソイルにはないメリット(洗うことで長期間使用できることや、底砂クリーナーを用いた積極的な泥抜きができること、色彩豊かなバリエーションの中から選択できることなど)がありますので、生活する生き物にあわせて選んであげることが成功への第一歩となります。



質問6)
ソイルを敷いて水槽を立ちあげると水がにごってしまいます。できるだけ抑えたいのですが、何かいい方法はありますか。私の場合、水道と水槽の位置が遠く、バケツで水を導入しなければなりません。

A、水の濁りについては質問5を参照してください。水道と水槽の位置が遠く、バケツで水を導入しなければならないとのことですが、いくつか提案できることを挙げてみましょう。水の入れ方、給水システムは誰しも経験を積んでいくうちにより効率的な方法を考えたり、楽な方法、手のかからない方法、生体にとって最善な方法を探ったりするようです。バケツを用いる場合は・・・

・バケツの中にポンプを入れポンプに接続したホースを水槽に向ける給水装置を作る。

・バケツを水槽より高い位置に上げることができる場合は、サイフォンの原理を利用してエアーホースで少量ずつ注水する。

などが考えられます。

バケツで直接注水することに比べたら、ビニール袋を用いたほうが、舞い散りを抑えられ、静かに注水できそうです。ちょうど、新しく購入してきた魚の袋を水槽に浮かべるときのような注水方法も一考ください。

意外とよく見かけるのが、よく使う蛇口を二股にして、ひとつを水槽用とするケースです。

水道を水槽に近づけるために水槽用に蛇口を作ってしまうには、塩ビ管VP13、バルブソケットなどを使って水まわりの機能性を高めます。重たいバケツ運びが億劫でなくなり、管理もはかどるでしょう。



質問7)
ソイルの中にもバクテリアが繁殖して水の浄化を助けるという話を聞いたことがあります。本当でしょうか。

A、本当です。目には見えませんが、ソイルの粒子にはバクテリアが生活をし、分解作業ができる場所があります。水の浄化はろ過器を中心とし、ソイルはあくまでこのような働きがあるのだという認識をしている愛好家が増えています。底床内で微生物を増殖させるためにはある程度の水と酸素が必要なため、ソイルのみを敷くのではなく、水と酸素の流通を狙った粗目の素材を下敷きにする方法があるのです。

ソイルのみを敷いて水槽を稼動させると、飼育水の水温よりも底床内の温度は低くなりがちです。そこで底面にプレートを入れ、ヒーターなどの保温設備をすることで水と熱の対流を狙う方法も知られております。

製品によっては、ミネラルや微量元素が配合されているソイルも見られ、長期間にわたってバクテリアの活性化を狙ったり、底面式フィルターと併用したりすることで、より強力なろ過の実現を目指すのです。水草育成ソイル水槽の場合においては、多くの水草に必要な好気性バクテリアである根留菌の繁殖を補助することなどをうたう製品もみられます。

リセット時廃棄するソイルのうち、大粒のものだけを取り出し、次の水槽の「種ソイル」として用いる方法も広く知られるようになりました。目に見えないことまで、小さな微生物のことにまで思いをめぐらせてソイルに取り組む、見習うべき姿勢が広まっております。


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