南米ドワーフシクリッドを飼育しよう!

今日のテーマは、スパンコールを纏った魅惑の妖精たち、南米ドワーフシクリッド。
新しい仲間が紹介される度にその品種を飼育するためにアクアリストたちに新しい水槽をセットさせてきました。その魅力を知り、熱帯魚の虜となるきっかけにしていただきたいのです。

■南米ドワーフシクリッドへのアプローチ
『ソイル系』とよばれる底床素材の登場によって、飼育しやすさは飛躍的にあがったと言っても過言ではない。原料となる土に含まれる腐食酸が水槽内で有効に作用し、弱酸性の軟水という環境が作りやすくなり、彼らの生息環境を再現する近道ができたのだ。南米ドワーフシクリッドに限らず、水草育成、カラシン、コイ、グラミィ、レッドビーシュリンプなどを飼育するにあたっては、革命的な製品である。
彼らの生息環境の水質データは、弱酸性の軟水であるうえ、導電率(マイクロジーメンスという単位であらわされる。その水にどれだけ不純物が含まれているかを示す値。)がとても低いきれいな水である。日本の水道水からは導電率をさげるためにR/Oを通したり、硬度やPhを調整するためにピートを用いたり、イオン交換樹脂やPh調整剤を使用したり苦労しないと得られない。飼育設備は年々進化しており、10年前と比べてスマートな彼らの生活にふさわしい見た目にもスタイリッシュな製品が増え、『おしゃれアピスト生活』をしているハイアマチュアも少なくない。Ph調整機能をもつろ過材や、アンモニウムイオンや亜硝酸を素早く分解し水槽の立ち上げに有効なバクテリアの部門は、各メーカーから優秀な製品がリリースされているので、南米ドワーフシクリッドへのアクセスが格段にしやすくなっている。
■水槽について
美しい、大きくならない、水草水槽でもOK、繁殖も狙える、というのがかれらの特徴である。水槽は30cmの小型のものから楽しめる。繁殖にはある程度水量のある45~60cm水槽がおすすめである。おとなしい魚との混泳水槽の場合は、エサをとり遅れないか、十分行き渡ったかのチェックが必要だ。
■フィルターについて
外部式、底面式、上部式、外掛け式‥自分の管理しやすい器具を選ぼう。稚魚などが吸い込まれないようにストレーナーにスポンジを装着するのがトレンドである。目には見えないが、アンモニウムイオンや亜硝酸を分解するバクテリアが有効に作用しているか、が管理の分かれ目である。生物的ろ過が効いている水槽の多くは、ろ過の最終段階で生成される『硝酸塩』が酸性のため、Phは徐々に酸性に傾いていく。高濃度の硝酸塩や亜硝酸は生体にはやはり有害で、硝酸塩を除去する作業が水かえになる。水質管理のポイントは、自分が使用するもとの水の水質を調べ、調整し、その水質が水槽内でどのように変化していくかを把握することで、R/Oフィルターや浄水器、各種水質測定キット、調整剤、バクテリア選びも楽しみのひとつにしてほしい。
■底床について
ソイル系底床素材は優秀であるが、底砂部門はは多くのメーカーがひしめく激戦区であり、中性ないし弱酸性表示のあるものも多い。中性とは、水槽内でなにも溶出しない上になにも吸着しないことを示す。弱酸性表示の素材は中性以上の水を張ったときに弱酸性に傾ける機能があることを示す。底砂クリーナーをかける砂利と、一度敷いたら基本的にリセットするまで敷きっぱなしのソイル系は扱いが大きく異なるため、管理にあったものを選択してほしい。最近ではソイル系素材に慎重にクリーナーをさす上手な例も見え始め、底床の状態の見極め、管理も幅が出てきているようだ。
■エサについて
アピストグラマは1日中底床に落ちているエサをついばみ、少しずつ食べる習性をもつ。これまで当欄では、まず少量のエサを入れる、そして食べきったらもう少し与える、この繰り返しの時間を数分、という提案をしてきたが、アピストグラマに関してはわざと底に沈めるやり方も提案したい。スポイトで飼育水ごと魚たちのところに与えてやる方法がおすすめである。冷凍飼料でもフレークフードでも利用できる。エサが水面にあるよりは、エサを彼らの生活空間に渡すようなやり方のほうが喜んで食べてくれることと思う。ショップではなにを与えていたかを問い合わせてほしい。冷凍赤虫、冷凍ミジンコ、フレークフード、ディスカスフード、ブラインシュリンプ‥なんでも食べる健康な魚にしよう。ただし、残餌は水質を悪化させ、エロモナス症などの原因となるので、与えるエサの量はきわめて重要である。
■飼育にあたって
アピストグラマの仲間はペアでの飼育をおすすめする。ワイルド個体については、その便すべてがオス、あるいはメスということもあるため、『お店にいるとき買う』のが原則になる。産卵はときにハーレム型をとり、決まった相手とだけペアになるとは限らない。性成熟が十分なオスと抱卵しているメスが出会えば、繁殖行動をとる。ペアで販売されているケースも多く、ペアでの飼育のほうが管理しやすいと思われる。
ショップと良いコミュニケーションをとることが優良魚入手の近道である。入荷日、入荷状況を知ったり、生体のトリートメント面においてかなり大きなアドバンテージを得られるにちがいない。購入時には、ショップの水を多めに分けてもらい、水合わせを慎重に実施してから導入しよう。
■産卵について
南米ドワーフシクリッドは、産卵場所の違いによって二つに分けられる。平らな石や水草や流木の表面などの人目につく場所に産卵するオープン・スポウナーと、ハングオンした流木や洞窟状になった人目につかない場所に産卵するケーブ・スポウナーである。
オープン・スポウナーは
パピリオクロミス属
ディクロッスス属
ナンナカラ属
ケーブ・スポウナーは
アピストグラマ属
アピストグラモイデス属
ビオトエクス属
タエニアカラ属などである。

種類によって、繁殖の難易度が異なる。小型シクリッドはコレクションするのも楽しみのひとつで、繁殖時に最高潮の美しさをみせるものが多い。順番にチャレンジしてみよう。
初級種・・・
ラミレジィ
アルティスピノーサ
ナンナカラ・アノマラ
Ap.アガシジィ
Ap.カカトゥオイデス
Apボレリィ
Ap.トリファスキアータなど

中級種・・・
Ap.ビタエニアータ
Ap.ホングスロイ
Ap.マクマステリィ
チェッカーボードシクリッド
タエニアカラ・カンディティなど

上級種・・・
ディクロッススマキュラータ
グリーンドワーフシクリッド
Ap.エリザベサエ
Ap.メンデジィ
Ap.イニリダエなど

■オープン・スポウナー
オープンスポウナーは、平たい石や流木の表面に卵を産み付ける。親が底砂を少しくぼませるように掘り、そこを産卵場所とするペアもいる。オスとメス2匹で産卵場所を口で掃除する。例えば4cmのラミレジィのメスは100個ほどの卵を産む。メスが5~6個産むとすぐさまオスが放精、という動作を繰り返す。産卵後、オスとメスが交代で胸ビレをあおぎ、卵に新鮮な水を送ったり、ふ化した稚魚を口に含み移動させたりと健気に世話をする。ふ化後4~5日でヨークサックを吸収し終えて稚魚たちの自由遊泳が始まる。親は稚魚たちが自由遊泳に入るまで世話をする。優秀なペアほど順調に育児が進む。水かえ、エサやりなど管理をする側にとっては、多少ペアまかせにし、刺激を与えすぎないことがポイントだ。稚魚育成には、ふ化したてのブラインシュリンプを用意しよう。1日に4~5回、なるべく多くの給餌をしたい。ブラインシュリンプのふ化は24時間かかるので、ふ化器は、8時間ごとなら3系統必要になる。ポイントは『ふ化したて』のものを与えることだ。自由遊泳が始まったばかりの稚魚たちは、とても小さく、初期のエサやりが極めて重要だ。ふ化後時間が経過してしまったブラインシュリンプは大きくなってしまうし、ブライン自身の成長のため栄養を吸収されてしまっている。自由遊泳に入ったら、まず稚魚たちにふ化したてのブラインシュリンプを食べさせることに全力を注いでほしい。冷凍ベビーブラインシュリンプも市販されている。忙しい人には必需品だ。カップに飼育水をとり、冷凍ベビーブラインシュリンプを入れスポイトで稚魚たちのところへ与えてあげよう。粉末タイプのベビーフードや固ゆでした卵の黄身なども同様の方法で与えてあげよう。ふ化したての生きたブラインシュリンプは稚魚たちを早く大きく成長させることができるので、稚魚育成においては避けて通れないアクアの道である。稚魚たちがお腹いっぱい食べた様子は、腹部のふくらみで目視、観察しよう。幼魚期の栄養不足はその後の成長に大きく影響するのでしっかり給餌してあげたい。

■ケーブ・スポウナー
人目につかない場所で産卵するので、流木や水草、素焼きの植木鉢、市販の産卵窟などを用意してあげよう。密にレイアウトした場合などは、稚魚の群泳を発見してから産卵していたことを気づかされるケースもある。産卵が近づいたメスは体色の黄色味が強くなる。輸卵管が突出して産卵しようとする場所にテリトリー(縄張り)をもつ。この抱卵したメスのテリトリーに性成熟の十分なオスが入ってきて、産卵に至る。アピストグラマの場合、メス個体の大きさにもよるが、30個から200個ほどの卵を産む。(アガシジィは少なめで30個から80個)産卵後はメスがよく卵を守り稚魚の世話をするので、オスはとり出すかセパレートしてやるとよい。卵は3日ほどでふ化するが、繁殖時にかなり神経質になる種が多く、蛍光灯などの照明はやや暗めにしたりする。ライト点灯時、急に明るくなったり、消灯時、急に暗くなったりすることが親たちにとってストレスになるようなら、遠めから照明を当て続け、これは消さない、などの工夫をするケースもある。小型水槽用のクリップ式照明などが便利でおすすめだ。アピストグラマに限らず、エンゼルフィッシュやディスカスにも応用できる。稚魚たちにふ化したてのブラインシュリンプを用意することなど育て方は、オープン・スポウナーと同様である。2ヶ月で12mm~15mmに育てる。保護色で目立たない稚魚たちの色がでてくるのはずっと後になってからである。
(鉄則!)亜硝酸濃度はこまめにチェック。
(鉄則!)ペアで飼育しよう。
(鉄則!)優良個体を判別する眼を養おう。