ろ過器!

フィルターは水槽で生活する魚や水草たちのライフラインのひとつであります。
いろいろなフィルターが流通していますが、その特長、選び方、取り扱い、メンテナンス、使い方などについてみていきましょう。

■フィルターを選ぼう
「熱帯魚飼育セット。○○○○円!!」。私の勤務するお店も含めて、多くのショップ、メーカーが魅力的な水槽セットを展開している。水槽を立ち上げるとき、このセットからスタートするアクアリストはたいへん多いと思う。しかし、まずフィルターがあって魚を選ぶよりは、これから飼育する生体を決めてから、それに適したフィルターを選びたいものである。
飼育器具へのこだわりは、趣味としてのアクアリウムを奥深いものにする。フィルターにも、ちょっとした気配りや工夫をすることで、飼育する魚や水草たちに対して、ふさわしい環境を作ってあげることができるのだ。

☆代表的なフィルター

投げ込み式フィルター 従来のエアーポンプ式のものに加えて、小型水中モーター内蔵のものも心強い。交換カートリッジが充実していて手軽である。金魚などに多く用いられる。

スポンジフィルター ベタの飼育・繁殖、グッピー、プラティなどの稚魚育成、ディスカス水槽のサブとして活躍している。

底面式フィルター エアーポンプ式のもの、水中ポンプ式のものがある。定期的な底砂掃除をすればろ過能力は高い。場所を取らないのでショップでも多く見られる。

水中式フィルター 水槽の外にはコンセントしか出ないコンパクトさが売りである。音も静かである。横にしても稼動するため、水位の低いカメ水槽などにも多く見られる。

外掛け式フィルター 業界ここ10年のスマッシュヒット製品である。安価で手軽なうえ、純正ろ過材は活性炭を多く含み、飼育水を透明にしやすい。

上部式フィルター 魚を育てる設備では不動の4番。場所を取らず、メンテナンスもしやすい。一般的な熱帯魚飼育セットには定番のように入っている。

外部式フィルター 当欄おすすめのフィルター。置き場所さえ確保できれば、他のフィルターにおいて見られる管理のストレスが最小限だ。耐久性抜群、アクセサリーも充実している。

オーバーフロー式 アロワナ、古代魚、ナマズなどの大型魚、海水魚などに多く用いられる。設備はおおがかりだが、ろ過材がたくさん使用できるうえ、メイン水槽をすっきり見せることができる。こだわりの設計も楽しい。

フルダイズ式 ろ過材は細かいほどよくゴミが取れる、しかし細かいほど目詰まりしやすい、というジレンマを、水流によって微細なろ過材を動かすことによって解消している。生物ろ過能力は高い。

水は、フィルター内を速すぎず、遅すぎない速度で流れなくてはならない。水流が速すぎると、微生物による分解が十分に行うことができない。遅すぎると、生物ろ過の段階で酸素が不足し、ろ過バクテリアが死滅し、油膜の原因となったりする。
ろ過材の目づまり、ホースや配管の折れ・詰まり、プレフィルターとして取り付けたストレーナースポンジの目づまりなどは、こまめにチェックしよう。水流調節機能のあるものについては、魚の種類、大きさ、匹数などにもよるが、飼育者自身が良好なポイントを探らなくてはならない。フィルターは魚を飼育する上で最も重要な器具のひとつであり、汚れたまま使用していると、まったく機能を果たさないので、定期的なメンテナンスは欠かすことができない。エアレーションは、ろ過バクテリアを活性化させるのでおこなうにこしたことはない。
購入にあたって、取り扱っているフィルター、ろ過材はショップによって違うから、「ろ過材はどれがいいですか?」と尋ねるよりは、例えば「耐久性が良いのはどれですか?」とか、「ろ過バクテリアの着生が良いのはどれですか?」とか、「物理ろ過にはどれがいいですか?」とか、「この魚にはどれがいいですか?」などと、ポイントを決めて質問をぶつけたほうが、良い答えが得られると思う。例えば一般的な60cm水槽に多く用いられる上部式のポンプは、1時間におよそ600リットルの水を流通させる。外部式を見てみると、1時間に440リットルのもの、500リットルのものなどが60cm用として販売されている。もちろんそれぞれのろ過槽の容積も異なる。多くのメーカーが競って製品をリリースしているので、価格、耐久性、デザイン、メンテナンスのしやすさなどをチェックしてほしい。

☆自分でできるひと工夫☆
以下に提案する方法はそれぞれ愛好家が実践しているものである。改造や調整は自分の責任で行っていただきたい。器具のせい、人のせい、魚のせいにはしてはならない。

■純正ろ過材を使用しない、あるいは組み合わせる例
①外掛け式純正マットの中に高性能ろ過材を入れる。
使用済み純正マットの上のほうをカッターで裂く。中身は捨て、ポケット状になったスペースに高性能ろ過材をつめて再利用する。

②外掛け式マットの空いたスペースにもろ過材を導入する。
純正マットと併用して、ネットに入れたろ過材にも水を通す。交換や清掃は日を違えて実施するとバクテリアの流出を防ぎやすく、維持しやすい。

③投げ込み式の中に高性能ろ過材やサンゴ砂などを入れてグレードアップや水質調整を目指す。
サブとしては威力を発揮する。Ph調整にも便利である。

④水中式の中に高性能ろ過材を入れる。
例えば純正スポンジを半分に切って、残りのスペースにろ過材をつめる。せまいスペースも有効に活用したい。

⑤上部式の中にスポンジフィルター(スポンジ部分だけ)を入れる。
高性能スポンジを上部式のろ過材として贅沢に使用する。バクテリア着生面積は飛躍的にアップする。

■ろ過設備を連結する例
①底面式+上部式
底砂クリーナーでの適切な管理をすれば、上部式の汚れ方はかなり緩やかになる。連結パイプにスリットを入れると事故が少ない。

②底面式+外部式
長期的なレイアウトに向く。水草育成もOKである。底面式の立ち上がりパイプと、外部式の吸水パイプを上手に接続したい。

③底面オーバーフロー
外部式でろ過された酸素を豊富に含んだ水を底床内に流通させることによって、底床を腐敗させない効果が期待できる。水草育成などに使われる。

④底面式+外掛式
ストレーナー(吸水口)を使用せずに、小型水槽で配管をすっきり見せることができる。

⑤外部式+プレフィルター
メインの外部式に水が入る前に、同じ規模のろ過槽をプレフィルターとして接続する。

⑥上部式+スポンジ
上部式のストレーナーを外して、高性能スポンジフィルターを取り付ける。

⑦水中ポンプ+上部式
水位が水槽の半分以下の時には有効である。水中ポンプを底に設置して、汲み上げた水を上部式ろ過槽に流す。カメの飼育などにも適している。

⑧水中ポンプ+外部式
水槽の下に外部式を設置できない場合に用いられる。屋外のプラ舟や小型の池などに適している。

⑨いわゆるタンクインタンク
水槽(大)の中に水槽(小)を入れる。小水槽はエアー式か水中ポンプ式の底面ろ過をし、(あるいは大きめの投げ込み式を砂利で隠す形)砂は厚めに敷く。小水槽をまるごと大水槽に入れフィルターとする。大型のベアタンクなどで多く見られる。

■出水、水流に対する工夫

①シャワーパイプの穴の大きさ、穴の数を変える
出てくる水の量は一定であるので排水シャワーの勢いを調整することができる。緩やかな水流をつくることができる。

②出水口の分岐
岩組みレイアウトなどでは、止水域ができやすいため、例えば排水を2箇所にして、水の行き来をよくしようとするものだ。

③エルボの有効利用
底砂が掘れてしまったり、排水の向きを変えたりするのに用いられる。

④ディフーザー
外部式や水中ポンプに取り付けることで、排水に空気を混ぜ、エアーポンプがなくてもエアレーションができるようになる。

⑤ジェットパイプ
強い水流をつくるときに、排水口をしぼったジェットパイプを用いると効果的である。シクリッドやアロワナなどに活用されている。

⑥外掛け式の出水
水が滑り落ちる通路に白マットを取り付け、落下音やCO2の放出を防ぐなどの目的で、手を加える。

■吸着ろ過材について

フィルターの中で生体にとって有害な物質などを閉じ込める役割をするのが、吸着ろ過材である。製品によって吸着能力や吸着する物質などは異なる。ニオイ分子(カビ臭、魚臭、フェノール臭など)、黄ばみ分子(流木などに由来するタンニン、フミン酸、エサや魚のフンに含まれる色素など)流木のアク分子、アンモニア、硫化水素、鉄、マンガン、亜鉛、トリハロメタン、残留塩素、リン酸塩などの有害物質を簡単に取り除くことができる。吸着しきると効能はなくなるので、新しいものと交換する必要がある。交換時期のスパンの長いもの、多くの有害物質を除去できるものほど高性能である。一般に価格と性能は比例している。吸着ろ過材も、生物ろ過材同様、ウールマットを通した後に設置すると、効果的で長持ちする。フィルター購入時や水槽セット時に活性炭が多く使われるのは、生物ろ過材にろ過バクテリアが定着するまでの間、活性炭にアンモニアを吸着させ、順調に水槽の立ち上げができるようにという考えからである。
活性炭は魚病薬色素も吸着する。薬浴の際、吸着ろ過材は使用しない。魚病薬は病原菌を殺す目的で投与するが、生体は長期間に渡って魚病薬にさらされているとストレスになる。薬浴をし、病気が治ったあとは、積極的に魚病薬およびその色素を吸着してあげたいものである。