輝く鱗はまさしく虹色!レインボーフィッシュを飼育しよう!

1994年、ドイツのニュルンベルクで開催された観賞魚のビッグイベント、インターズーにおいて、ハイコブレハー氏がネオンドワーフレインボーを展示、『あの美しい魚は何だ!』と騒然となってからずいぶん時間が経過した。オーストラリアやパプアニューギニア、イリアンジャヤなどレインボーたちの分布地域からドイツに持ち帰られ、繁殖された個体たちの展示であった。当時は高価で手の出なかった夢の魚たちも、インドネシアやバンコックで養殖がすすみ、だいぶ求めやすい価格になってきた。その魅力と水草レイアウトの人気が合わさって、飼育しやすく美しい入門魚の地位を確立している。
残念ながら日本でワイルド個体を目にすることができるのはセレベスレインボーなど数種にとどまっているが、今回は虹色の魚レインボーフィッシュたちについてナビゲーションしていきたい。
この仲間は、背ビレが2基に分かれているのが特徴で、元来海起源の魚であるといわれている。二次淡水魚などと呼ばれることもある。体型や行動に海起源の名残が感じられるものの、純淡水に適応してかなりの時間が経過していて、飼育自体は淡水水槽で問題ない。彼等の生活水域はさまざまでアルカリの硬水域にも、弱酸性の軟水にも、止水にも流水にも分布するが、多くの種類はPH6.0から6.8で産卵まで至る。海に近く、アルカリ度の高い環境に生息する個体ほど大型で、色彩も豊かになる傾向があるようだ。現在、日本で入手できる個体は、インドネシアのブリード個体がほとんどで、養殖自体は弱酸性でおこなわれている。ブリーダーたちの弛まぬ努力、累代繁殖のおかげで、弱酸性の軟水での飼育がしやすくなっており、初心者でもベテランでも、水草レイアウト水槽でも主役になれるので、楽しみ方はアクアリストの数だけありそうだ。
■水槽について
45cm前後の小型水槽から楽しめるが、なるべく横幅の広い水槽での飼育をおすすめする。レインボーの体型は流線型で、非常に遊泳が活発なうえ、速度も早い。例えば、水槽の横幅が2倍になると彼等の遊泳距離は2倍以上になる。運動量が増えれば、それに見合うエサの量が必要となるため、健全な育成にはより大きな水槽のほうがよい。レインボーに限らず、同じ大きさの魚を60cm水槽と120cm水槽とに別々に飼育すると、大きさ、厚み、筋肉のつき方などに違いがでてくる。水量が多ければ水質安定がはかりやすいので、スペースの許す限り、よくばって大きな水槽を用意してほしい。高価ではあるが、円形水槽での飼育も面白いと思う。
■エアレーションについて
エアーポンプはなるべく水槽より高い位置にセットしよう。万一逆流した水がポンプに浸入すると、故障する可能性がある。逆流防止弁はぜひ使ってほしいアイテムだ。この号が出る9月、日本はまだ残暑がきびしく、30℃ほどになってしまう水槽も多いことと思う。水温が高ければ高いほど、そこに溶け込める酸素の量は減っていくので、とくに夏はエアレーションが重要だ。魚たちの呼吸に使われるだけでなく、ろ過バクテリアの活性化を促進させる。バクテリアの死骸などによる油膜の発生もなくなる。CO2を添加している水草水槽においては、CO2が停止し、照明も停止してからエアレーションをしよう。水草も照明を消すと酸素を吸収する。次の日CO2、照明がスタートするまでエアレーションする。タイマーを使用すると管理が楽になる。余談になるが、購入したエアーストーンは一晩ほど水につけておくとよい。エアーホースをつないだら、口で強めに吹き、ポンプに接続しよう。いきなりポンプにつないで水槽に入れてしまうと、空気の道みたいなクセが出来ることがあり、均一にエアーが出なくなることがある。特にエアーカーテンタイプの長いストーンには有効である。
■エサについて
レインボーたちは活発に遊泳するため、たいへんよくエサを食べる。フレークフード、アカムシ、イトミミズ、ミジンコなど数種類を用意してバランスの良い給餌をこころがけよう。コムスケールレインボーやネオンドワーフレインボーなどには、色揚げ用フレークが有効で、美しく仕上がる。少しずつ与え、食べきったらもう少し与える、腹部が膨らんでくるのが観察できるところが目安の量である。じっくり育てた個体は美しい、これは、短期間で一気に大きくなるよりは期間を経て大きくするほうが、色彩豊かに成長させることができる、ということだ。まさに体内から虹がでてくるように育てるには、日常の管理や観察、エサの量の見きわめが必要になる。
■繁殖について
レインボーのメスは地味なものが多いが、成熟したオスの、各ヒレを力いっぱい広げてディスプレイする求愛行動は、感動的に美しい。この一瞬を見ると、水槽管理の苦労も忘れ、手入れが楽しくなることだろう。45~60cm水槽に水草を多めに入れ、雌雄をそろえる。オスは求愛、追尾を繰り返したあと、メスを水草におしつけるような格好になり、ブルブルッと震えて離れる、卵は1mmあるかないかほどの大きさである。10個くらい産卵する場合が多い。同時に放精も行われる。卵には粘着糸とよばれる糸状の組織がくっついていて、水草に付着する。レインボーの多くは毎日10個くらいずつ産卵するので、ある程度のところで、親を別水槽に移したほうがよい。産まれた順に発生が進むので、ふ化直前の卵と産まれたての卵が同じ水槽にある状態になる。ふ化した稚魚が親に食べられないためにも、隔離は必要な作業である。インドネシアのファームでは、30cmほどの小さい水槽をずらっとならべ、オスを毎日ないし1日おきにとなりの水槽(メスが待っている)に移していく方法がとられている。大きさの異なるレインボーがたくさん採れるのだ。産卵自体は数日間続く。稚魚は小さく、育成は手間がかかると感じる場面もあると思う。インフゾリア、ブラインシュリンプ、卵の黄身、稚魚用フードなどを与え、2ヶ月ほどで2cmくらいのレインボーとしよう。育成水槽に導入する水草は、環境への適応力の強い丈夫な種類か、育てるのが得意な種類を選ぶとよい。粘着糸があるし、育成に2~3ヶ月かかるので、水草が枯れてしまっては、水質悪化もまねく。ハイグロ、ウィローモス、カボンバ、スプライトの類が使われることが多い。個人的には、ウィローモスに突っ込んでいくペアをみていただきたい。レインボーに限らず、メスは大きい個体ほど抱卵数も多い。繁殖に用いる個体は、コムスケールレインボーで7~8cm、セレベスレインボーで5cm、ポポンデッタで3.5cm、ネオンドワーフレインボーで4.5cmくらいから。十分性成熟を確認してからチャレンジしよう。
■購入時、運搬時
ワイルドものを除けば、生体のクオリティはほぼ均一に販売されている。ショップの店員さんに問いあわせたり、状態を確認してから購入してほしい。雌雄の判別も購入時の重要なポイントだ。これまで、新種初輸入のときにオスばかり、あるいはメスばかりといったこともあったが、現在ではペアを入手することも困難でなくなった。ビニール袋に酸素パックしてもらう際は持ち帰るまでの時間や交通手段を店員さんに伝えるとよい。できればなるべく大きな袋にゆったりパッキングしてもらったほうが、袋の中で衝突して口先が白くなったり、スレたり、というトラブルを回避できるだろう。袋を新聞紙で包んだりするのは、保温の効果もあるが、暗くすることによって生体の遊泳を少なくし、キズつけずに運搬するためでもある。持ち帰った袋を水温合わせで水槽に浮かべることはよく知られているが、この時、照明は消したほうが良いことはあまり知られていない。マイ保温バッグやマイ保冷バッグを持参してくださる愛好家も増えており、魚に対する愛情や、地球環境保護に対する理解を感じるところである。冷凍アカムシを家庭の冷凍庫に入れることを奥さまから反対され、マイ冷凍庫にアカムシやミジンコ、ブラインシュリンプを収納するアクアリストも多く、敬意を表するところだ。
■混泳とコレクション性について
性格が比較的おとなしいので、カラシンやコイ、エンゼルやグラミィとのコミュニティタンクをよく見かける。混泳させる魚の大きさと、エサがいきわたっているかを注意すればOKだ。ハーフオレンジレインボーの滲み出すオレンジや、ブルーレインボーの独特の青、コムスケールレインボーの輝く赤などは、貴重なタンクメイトとなろう。また、レインボーだけを集めた水草水槽も見事で、流線型の魚たちは群れをなし、いっせいに泳ぐ姿が観察できるであろう。当欄としても、ある程度の群れでの飼育をおすすめする。少数の飼育よりも、本来の色彩が出やすい。熱帯魚を飼育していない人が見ると、『あの魚、なんていうの?』と聞かれるようなスター性があるのがレインボーフィッシュの優秀なところで、あなただけの1匹に、早く出会っていただきたい。