大切な腎臓機能

熱帯魚が元気なく、フラフラ泳いでいるのですが・・・。
という質問を受けました。
「これを入れればシャキーン!と元気になります!」と、劇的に作用する魔法の薬はありません。今日は腎臓について考えてみましょう。

腎臓は人間には二つありますが、魚はひとつです。魚にとって腎臓は、鰓と同じくらい重要な臓器です。腎臓は血液中の不要な老廃物(有害なアンモニアなど)をろ過し、尿として排泄させます。魚の血液は腎臓を通過してきれいになるのです。
血液を池の水にたとえると、心臓がポンプで、腎臓はフィルターになります。ただし、池のフィルターには浄化のためにバクテリアが必要ですが、腎臓にバクテリアは不必要です。不必要どころか腎臓にバクテリアが進入すると、腎不全を引き起こして魚は死んでしまいます。
一般的に、体内に病原菌が侵入すると病原菌は血液中に入り込み、腎臓までたどり着きます。病原菌に感染した魚を解剖して腎臓を検査すると、腎臓に病原菌が繁殖している場合がよくあります。
腎臓に侵入した病原菌を殺菌する方法は、薬浴または経口投与(エサと混ぜて与える)です。薬浴の場合、薬は鰓から吸収され、血液中に入って腎臓に送り込まれます。経口投与は腸から薬が吸収され、同様に血液中から腎臓に入ります。そして腎臓にいる病原菌を殺菌します。
病原菌も薬も血液によって腎臓まで運ばれるわけです。
人と同様に魚の血液にも寿命があります。古くなった血液は新しい血液と入れ替わります。
魚の血液は腎臓と脾臓で作られていますので、どちらも魚にとって重要な臓器なわけです。
魚にストレスがかかると腎臓の機能が低下します。すると、腎臓が血液を作る能力も低下するので、魚は貧血状態になります。貧血を起こした魚は、水面に集まり鼻上げ(頭部や口を水面に向けてパクパクしている状態です)します。酸素を運ぶ血液が少なくなってしまっているため、酸素不足になるのです。エアレーションしているにもかかわらず、魚が鼻上げする、水面近くをフラフラ泳ぐ、という状態になります。
この場合の対応策は、まず水温を下げることです。まずは1℃下げてあげます。(いきなり2℃も3℃も下げると、変温動物である魚は体温が急降下し、死にいたります。)水温が下がることにより魚の行動を鈍らせて、酸素の消費量を少なくします。また、低水温では水に溶け込む酸素の濃度が上昇します。
このようにして魚を落ち着かせてから、塩を0.3~0.5パーセント入れます。
浸透圧を調整することにより、魚の腎臓負担を軽減させます。

ストレス・・・
観賞魚を飼育するうえで、病気は必ずといってよいほど、飼育者が遭遇する問題です。観賞魚の病気の主な原因は、ストレスであると言われています。
魚がストレスを受ける原因をまとめてみましょう。
1、餌の食べ残しなどによる水質の変化と悪化。
2、急激な水温の変化。
3、魚の移動。
4、過密飼育。
5、餌の品質。
6、相性の悪い魚を同一水槽で飼育すること。
7、照明の照射時間が長すぎること。
魚が元気なくフラフラ泳ぐ場合は、水温、水質チェック、環境の見直し、魚病薬の使用、エアレーションの準備などの段取りが肝心ですね。