ベタがきっかけで観賞魚の世界に魅了されるアクアリストもたいへん多いです。今日はベタについて考えてみましょう。
■ショーベタとは
ショーベタは改良品種で、元は東南アジアに生息するベタスプレンデスを長い時間をかけて改良、選別、淘汰したものなので学名は同じ「Betta splendens」です。学名の末尾につく「var.」は、変種、改良品種を示します。改良の過程で闘争性を高めたプラガットが誕生し、ヒレを長く美しくしていったトラディショナルベタ(日本では並ベタとよばれる)がうまれたのです。ショーベタは、トラディショナルベタをベースにさらに改良、選別を加えたもので、ショークオリティベタと呼ばれるまでに美しさに磨きをかけた品種です。トラディショナルベタは、尾ビレの軟条は1回しか分岐していませんが、ショーベタは2回~3回分岐しています。尾ビレが扇形に広がるデルタテールが作出されてから改良は加速し、180度まで尾ビレが広がるハーフムーン(半月)の系統が人気です。尾ビレの形状も、シングルテール、ダブルテール(シザーステール)、クラウンテールなど多くの品種があります。
体色もソリッド(単色)、複数の色が混ざるマルチカラー、体とヒレが別の色で分かれたバイカラー、ヒレの途中から別の色に変わるバタフライなど魅力的なスタイルをもつ品種が多いです。同じ魚がふたつとないところが、コレクション、自分だけの系統作出、コンテストなど、多くの楽しみを提供してくれています。
■ショーベタの飼育方法
並ベタに関しては、日本のショップでは1匹ずつ容器に収容されて陳列されることが多いですね。中国や香港、台湾、タイでは1匹ずつパッキングされ袋のまま吊り下げられて店頭に並んでいます。弱酸性の軟水が得にくいドイツでは、ベタをビンに収容するという習慣はないようで、ショップでもほかの熱帯魚とのコミュニティタンクでの販売が主流です。
いまやショーベタは熱帯魚業界でも確固たる地位を獲得しています。ハイクオリティの個体はしっかり水槽に1匹ずつ収容され、美しいヒレを傷つけることのないように水ごとすくい出されます(カチョンとよばれるベタ専用スコップが使われます)。ベタからすれば水量は多いにこしたことはありません。飼育、繁殖にあたっては、小さなビンや容器でなく、水槽の使用をおすすめしたいです。
水量の少なさに起因する不安点は
①水質維持の難しさ
②親魚のストレス
③保温方法の選択肢が少なく水温管理が難しいこと
④稚魚の遊泳距離の短縮からくる成長不良
などがあげられます。
フィルターの水流は強すぎないものを選び、ヒーターにはカバーを取り付け26℃前後で管理しましょう。
例えば、30cmのキューブ水槽を2個並べる方法と60cm水槽をセパレーターで分けて管理する方法とを比べて、どちらが管理しやすいと思われるかは意見が分かれるところでありましょう。
また、ショーベタはその美しさを維持していくのにフレアリングトレーニングが欠かせません。フレアリングとはオス個体が相手を威嚇する行動で、各ヒレを力いっぱい広げて自分の存在をアピールすることです。単独飼育の場合は、鏡を見せてあげるとそこに写った自分の姿を見てフレアリングしますし、水槽やビンなどの容器飼育の場合は仕切り板をはずしてお互いの姿を見せ合うことでフレアリングさせます。1回15分ほど、1日2~3回行うとよいでしょう。エサやりも兼ねて時間をつくっていただきたいです。美しいショーベタはもってうまれた素質、親から受け継いだ遺伝子と、毎日のトレーニングによって作られていきます。もしトレーニングをしなかったならば、いかに優秀な素質をもってうまれても、ヒレの開きが悪くなり、ショークオリティではなくなってしまうでしょう。また、フレアリングしっぱなしだとオスは疲労してしまいます。
エサは、専用ベタフード、各種熱帯魚のエサ、冷凍赤虫、ディスカスハンバーグ、フリーズドライアカムシ、シクロプスなどを用意してあげましょう。食べ残しがないか、毎回確認が必要です。ピンセットやピペットはベタの飼育・繁殖には必需品ですね。
■ショーベタの繁殖方法
繁殖用として用意する水槽は30センチくらいの小型のものがおすすめです。60センチでも良いのですが、容器が広すぎたり深すぎたりするとうまくいかない場合があります。泡巣の構築、メスへの追尾によりオスは体力を消耗し、また、受精率も低くなります。オスはメスが産み落とした卵を口で拾って泡巣に詰め込むのですが、水槽が広すぎると卵を拾いこぼすことが多くなるようです。繁殖水槽は砂利を敷かないベアタンクが基本です。
フィルターは強い水流になるものを避け静かな作りにしましょう。水面が波立たず、稚魚を吸い込まないスポンジフィルターはおすすめです。照明はあまり明るくする必要はないので一灯式でも良いでしょう。ウォータースプライト、マツモ、アマゾンチチドメグサの仲間などの水草や、浮き草や人工物(果実を保護している網目状の発砲スチロールなど)を入れ、オスの泡巣構築の補助とします。少量のウィローモスを沈めておくと、ヒレが傷つきボロボロになり、時には産卵後に気絶したメスのクッションとなるので良いでしょう。また、稚魚のエサとなるインフゾリアの発生の促進ともなるので有効です。照明はオスが子育てするあいだは遠めから1灯、つけっぱなしにしておきます。急に真っ暗になる空間はストレスになることもあるようです。
泡巣を作れる性成熟したオスと抱卵したメスの個体を用意します。まずオスを繁殖水槽で飼育します。同時にメスは透明の産卵ケースに収容し、お見合いをさせるのです。(透明のセパレーターで仕切る方法も可)
オスがメスに向かってフレアリングをしてみせたり、泡巣を作り始めたら良い兆候です。泡巣の大きさが6センチほどになり準備が整ったら、いよいよオスとメスを一緒にしましょう。オスは泡巣の下でヒレをひろげ、メスに向かって求愛をします。メスは気に入ると泡巣の下まで来るようになります。オスはメスの体を巻くようにして抱きかかえ、抱卵、放精が行なわれます。ベタの卵は沈性卵であるため、水槽の底の方へ沈んでいきます。メスが(産卵後、ほぼ)気絶している間にも、オスはばらまかれた卵を口で拾い、泡巣に付着させる作業をします。この行動が何度も繰り返されます(30分~1時間くらい。卵の数は50~200個くらいです。)産卵後、メスはそっと掬いだし、元の産卵ケースへ戻します。オスはその後、泡巣を修復したり、落ちた卵を元に戻したりと子育てを一手に引き受けるのです。感動の場面の連続です!しっかり観察してください。
卵は水温26~28℃のとき2日でふ化します。ふ化した稚魚はまだ自由に泳ぐことができないため、沈んだ稚魚をオスが泡巣に戻す作業をします。稚魚たちは泡巣の中の空気を吸って生きていくのです。2~3日でヨークサック(卵黄)を使いきり、自由遊泳できるようになります。不眠不休で子育てをしたオスは、ここでようやく任務が終わるので、そっと掬いだし休ませてあげましょう。
ボロボロになったメスともども栄養価の高いエサを与え、回復させてあげると良いでしょう。稚魚はたいへん小さく、ふ化したてのブラインシュリンプが食べられる大きさに成長するのは、ふ化後4、5日目です。はじめは、逆にブラインシュリンプに食べられてしまうのではないか、という大きさです。それまでは水槽に発生しているインフゾリアか卵の黄身しか食べられないわけで、微生物の発生を促がしたり、水を浄化させる作用のあるPSBを入れる愛好家も多いです。この魔の一週間を乗り切ることがベタ繁殖の最大のポイントであります。
インフゾリアは、レタスやミルクを入れた別容器でわかす方法が知られていますが、忙しい現代人向きとは思えませんので、当欄としては、稚魚育成水槽にインフゾリアをわかす方法をおすすめします。PSBといっしょに、パウダー状のベビーフードを少量入れます。飼育水を少しだけ栄養化させるのです。実際に東南アジアの養殖ファームでは、ベビーフードをさらに細かく粉末状にしたものを初期飼料としているようです。また、屋外に水を汲み置き、グリーンウォーターを作っておき、その緑色の水をスポイトで注入する方法もあります。いずれにしても、会社や学校からは「ベタ惚れです」と言って早く帰宅し、初期飼料の段取りや、ブラインシュリンプのふ化に全力を注いでほしいのです。ブラインシュリンプでの育成は1ヶ月ほど続きます。その後はベビーフードやシクロプス、ディスカスハンバーグを小さくしてあげたものなどを与えて、栄養のバランスをとってほしいです。徐々に成長していく稚魚たちを1匹ずつわけていくのは、小競り合いをしてヒレを傷つける前からが良いでしょう。まずは次期親候補の個体を5~6匹残すようにしましょう。
オスがメスを巻くようにして抱き産卵が繰り広げられる様子はたいへん神秘的で美しい光景であります。その様子を観察するためにもぜひ、繁殖にチャレンジしてほしいところです。
子育てのあいだオスは、ほとんどエサを食べないで面倒を見ますが、子育てを終えたオスを水ごと別の容器に移すと、オスは見たことのないような、それはそれは大きなフンをします。子育てでフンをする暇がなかったのか、我が子のために水を汚したくなかったのか、人間ですら感心させられる場面です。
■ショーベタとは
ショーベタは改良品種で、元は東南アジアに生息するベタスプレンデスを長い時間をかけて改良、選別、淘汰したものなので学名は同じ「Betta splendens」です。学名の末尾につく「var.」は、変種、改良品種を示します。改良の過程で闘争性を高めたプラガットが誕生し、ヒレを長く美しくしていったトラディショナルベタ(日本では並ベタとよばれる)がうまれたのです。ショーベタは、トラディショナルベタをベースにさらに改良、選別を加えたもので、ショークオリティベタと呼ばれるまでに美しさに磨きをかけた品種です。トラディショナルベタは、尾ビレの軟条は1回しか分岐していませんが、ショーベタは2回~3回分岐しています。尾ビレが扇形に広がるデルタテールが作出されてから改良は加速し、180度まで尾ビレが広がるハーフムーン(半月)の系統が人気です。尾ビレの形状も、シングルテール、ダブルテール(シザーステール)、クラウンテールなど多くの品種があります。
体色もソリッド(単色)、複数の色が混ざるマルチカラー、体とヒレが別の色で分かれたバイカラー、ヒレの途中から別の色に変わるバタフライなど魅力的なスタイルをもつ品種が多いです。同じ魚がふたつとないところが、コレクション、自分だけの系統作出、コンテストなど、多くの楽しみを提供してくれています。
■ショーベタの飼育方法
並ベタに関しては、日本のショップでは1匹ずつ容器に収容されて陳列されることが多いですね。中国や香港、台湾、タイでは1匹ずつパッキングされ袋のまま吊り下げられて店頭に並んでいます。弱酸性の軟水が得にくいドイツでは、ベタをビンに収容するという習慣はないようで、ショップでもほかの熱帯魚とのコミュニティタンクでの販売が主流です。
いまやショーベタは熱帯魚業界でも確固たる地位を獲得しています。ハイクオリティの個体はしっかり水槽に1匹ずつ収容され、美しいヒレを傷つけることのないように水ごとすくい出されます(カチョンとよばれるベタ専用スコップが使われます)。ベタからすれば水量は多いにこしたことはありません。飼育、繁殖にあたっては、小さなビンや容器でなく、水槽の使用をおすすめしたいです。
水量の少なさに起因する不安点は
①水質維持の難しさ
②親魚のストレス
③保温方法の選択肢が少なく水温管理が難しいこと
④稚魚の遊泳距離の短縮からくる成長不良
などがあげられます。
フィルターの水流は強すぎないものを選び、ヒーターにはカバーを取り付け26℃前後で管理しましょう。
例えば、30cmのキューブ水槽を2個並べる方法と60cm水槽をセパレーターで分けて管理する方法とを比べて、どちらが管理しやすいと思われるかは意見が分かれるところでありましょう。
また、ショーベタはその美しさを維持していくのにフレアリングトレーニングが欠かせません。フレアリングとはオス個体が相手を威嚇する行動で、各ヒレを力いっぱい広げて自分の存在をアピールすることです。単独飼育の場合は、鏡を見せてあげるとそこに写った自分の姿を見てフレアリングしますし、水槽やビンなどの容器飼育の場合は仕切り板をはずしてお互いの姿を見せ合うことでフレアリングさせます。1回15分ほど、1日2~3回行うとよいでしょう。エサやりも兼ねて時間をつくっていただきたいです。美しいショーベタはもってうまれた素質、親から受け継いだ遺伝子と、毎日のトレーニングによって作られていきます。もしトレーニングをしなかったならば、いかに優秀な素質をもってうまれても、ヒレの開きが悪くなり、ショークオリティではなくなってしまうでしょう。また、フレアリングしっぱなしだとオスは疲労してしまいます。
エサは、専用ベタフード、各種熱帯魚のエサ、冷凍赤虫、ディスカスハンバーグ、フリーズドライアカムシ、シクロプスなどを用意してあげましょう。食べ残しがないか、毎回確認が必要です。ピンセットやピペットはベタの飼育・繁殖には必需品ですね。
■ショーベタの繁殖方法
繁殖用として用意する水槽は30センチくらいの小型のものがおすすめです。60センチでも良いのですが、容器が広すぎたり深すぎたりするとうまくいかない場合があります。泡巣の構築、メスへの追尾によりオスは体力を消耗し、また、受精率も低くなります。オスはメスが産み落とした卵を口で拾って泡巣に詰め込むのですが、水槽が広すぎると卵を拾いこぼすことが多くなるようです。繁殖水槽は砂利を敷かないベアタンクが基本です。
フィルターは強い水流になるものを避け静かな作りにしましょう。水面が波立たず、稚魚を吸い込まないスポンジフィルターはおすすめです。照明はあまり明るくする必要はないので一灯式でも良いでしょう。ウォータースプライト、マツモ、アマゾンチチドメグサの仲間などの水草や、浮き草や人工物(果実を保護している網目状の発砲スチロールなど)を入れ、オスの泡巣構築の補助とします。少量のウィローモスを沈めておくと、ヒレが傷つきボロボロになり、時には産卵後に気絶したメスのクッションとなるので良いでしょう。また、稚魚のエサとなるインフゾリアの発生の促進ともなるので有効です。照明はオスが子育てするあいだは遠めから1灯、つけっぱなしにしておきます。急に真っ暗になる空間はストレスになることもあるようです。
泡巣を作れる性成熟したオスと抱卵したメスの個体を用意します。まずオスを繁殖水槽で飼育します。同時にメスは透明の産卵ケースに収容し、お見合いをさせるのです。(透明のセパレーターで仕切る方法も可)
オスがメスに向かってフレアリングをしてみせたり、泡巣を作り始めたら良い兆候です。泡巣の大きさが6センチほどになり準備が整ったら、いよいよオスとメスを一緒にしましょう。オスは泡巣の下でヒレをひろげ、メスに向かって求愛をします。メスは気に入ると泡巣の下まで来るようになります。オスはメスの体を巻くようにして抱きかかえ、抱卵、放精が行なわれます。ベタの卵は沈性卵であるため、水槽の底の方へ沈んでいきます。メスが(産卵後、ほぼ)気絶している間にも、オスはばらまかれた卵を口で拾い、泡巣に付着させる作業をします。この行動が何度も繰り返されます(30分~1時間くらい。卵の数は50~200個くらいです。)産卵後、メスはそっと掬いだし、元の産卵ケースへ戻します。オスはその後、泡巣を修復したり、落ちた卵を元に戻したりと子育てを一手に引き受けるのです。感動の場面の連続です!しっかり観察してください。
卵は水温26~28℃のとき2日でふ化します。ふ化した稚魚はまだ自由に泳ぐことができないため、沈んだ稚魚をオスが泡巣に戻す作業をします。稚魚たちは泡巣の中の空気を吸って生きていくのです。2~3日でヨークサック(卵黄)を使いきり、自由遊泳できるようになります。不眠不休で子育てをしたオスは、ここでようやく任務が終わるので、そっと掬いだし休ませてあげましょう。
ボロボロになったメスともども栄養価の高いエサを与え、回復させてあげると良いでしょう。稚魚はたいへん小さく、ふ化したてのブラインシュリンプが食べられる大きさに成長するのは、ふ化後4、5日目です。はじめは、逆にブラインシュリンプに食べられてしまうのではないか、という大きさです。それまでは水槽に発生しているインフゾリアか卵の黄身しか食べられないわけで、微生物の発生を促がしたり、水を浄化させる作用のあるPSBを入れる愛好家も多いです。この魔の一週間を乗り切ることがベタ繁殖の最大のポイントであります。
インフゾリアは、レタスやミルクを入れた別容器でわかす方法が知られていますが、忙しい現代人向きとは思えませんので、当欄としては、稚魚育成水槽にインフゾリアをわかす方法をおすすめします。PSBといっしょに、パウダー状のベビーフードを少量入れます。飼育水を少しだけ栄養化させるのです。実際に東南アジアの養殖ファームでは、ベビーフードをさらに細かく粉末状にしたものを初期飼料としているようです。また、屋外に水を汲み置き、グリーンウォーターを作っておき、その緑色の水をスポイトで注入する方法もあります。いずれにしても、会社や学校からは「ベタ惚れです」と言って早く帰宅し、初期飼料の段取りや、ブラインシュリンプのふ化に全力を注いでほしいのです。ブラインシュリンプでの育成は1ヶ月ほど続きます。その後はベビーフードやシクロプス、ディスカスハンバーグを小さくしてあげたものなどを与えて、栄養のバランスをとってほしいです。徐々に成長していく稚魚たちを1匹ずつわけていくのは、小競り合いをしてヒレを傷つける前からが良いでしょう。まずは次期親候補の個体を5~6匹残すようにしましょう。
オスがメスを巻くようにして抱き産卵が繰り広げられる様子はたいへん神秘的で美しい光景であります。その様子を観察するためにもぜひ、繁殖にチャレンジしてほしいところです。
子育てのあいだオスは、ほとんどエサを食べないで面倒を見ますが、子育てを終えたオスを水ごと別の容器に移すと、オスは見たことのないような、それはそれは大きなフンをします。子育てでフンをする暇がなかったのか、我が子のために水を汚したくなかったのか、人間ですら感心させられる場面です。