2010年7月

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ベタがきっかけで観賞魚の世界に魅了されるアクアリストもたいへん多いです。今日はベタについて考えてみましょう。

■ショーベタとは
ショーベタは改良品種で、元は東南アジアに生息するベタスプレンデスを長い時間をかけて改良、選別、淘汰したものなので学名は同じ「Betta splendens」です。学名の末尾につく「var.」は、変種、改良品種を示します。改良の過程で闘争性を高めたプラガットが誕生し、ヒレを長く美しくしていったトラディショナルベタ(日本では並ベタとよばれる)がうまれたのです。ショーベタは、トラディショナルベタをベースにさらに改良、選別を加えたもので、ショークオリティベタと呼ばれるまでに美しさに磨きをかけた品種です。トラディショナルベタは、尾ビレの軟条は1回しか分岐していませんが、ショーベタは2回~3回分岐しています。尾ビレが扇形に広がるデルタテールが作出されてから改良は加速し、180度まで尾ビレが広がるハーフムーン(半月)の系統が人気です。尾ビレの形状も、シングルテール、ダブルテール(シザーステール)、クラウンテールなど多くの品種があります。
体色もソリッド(単色)、複数の色が混ざるマルチカラー、体とヒレが別の色で分かれたバイカラー、ヒレの途中から別の色に変わるバタフライなど魅力的なスタイルをもつ品種が多いです。同じ魚がふたつとないところが、コレクション、自分だけの系統作出、コンテストなど、多くの楽しみを提供してくれています。

■ショーベタの飼育方法
並ベタに関しては、日本のショップでは1匹ずつ容器に収容されて陳列されることが多いですね。中国や香港、台湾、タイでは1匹ずつパッキングされ袋のまま吊り下げられて店頭に並んでいます。弱酸性の軟水が得にくいドイツでは、ベタをビンに収容するという習慣はないようで、ショップでもほかの熱帯魚とのコミュニティタンクでの販売が主流です。

いまやショーベタは熱帯魚業界でも確固たる地位を獲得しています。ハイクオリティの個体はしっかり水槽に1匹ずつ収容され、美しいヒレを傷つけることのないように水ごとすくい出されます(カチョンとよばれるベタ専用スコップが使われます)。ベタからすれば水量は多いにこしたことはありません。飼育、繁殖にあたっては、小さなビンや容器でなく、水槽の使用をおすすめしたいです。
水量の少なさに起因する不安点は
①水質維持の難しさ
②親魚のストレス
③保温方法の選択肢が少なく水温管理が難しいこと
④稚魚の遊泳距離の短縮からくる成長不良
などがあげられます。
フィルターの水流は強すぎないものを選び、ヒーターにはカバーを取り付け26℃前後で管理しましょう。
例えば、30cmのキューブ水槽を2個並べる方法と60cm水槽をセパレーターで分けて管理する方法とを比べて、どちらが管理しやすいと思われるかは意見が分かれるところでありましょう。

また、ショーベタはその美しさを維持していくのにフレアリングトレーニングが欠かせません。フレアリングとはオス個体が相手を威嚇する行動で、各ヒレを力いっぱい広げて自分の存在をアピールすることです。単独飼育の場合は、鏡を見せてあげるとそこに写った自分の姿を見てフレアリングしますし、水槽やビンなどの容器飼育の場合は仕切り板をはずしてお互いの姿を見せ合うことでフレアリングさせます。1回15分ほど、1日2~3回行うとよいでしょう。エサやりも兼ねて時間をつくっていただきたいです。美しいショーベタはもってうまれた素質、親から受け継いだ遺伝子と、毎日のトレーニングによって作られていきます。もしトレーニングをしなかったならば、いかに優秀な素質をもってうまれても、ヒレの開きが悪くなり、ショークオリティではなくなってしまうでしょう。また、フレアリングしっぱなしだとオスは疲労してしまいます。

エサは、専用ベタフード、各種熱帯魚のエサ、冷凍赤虫、ディスカスハンバーグ、フリーズドライアカムシ、シクロプスなどを用意してあげましょう。食べ残しがないか、毎回確認が必要です。ピンセットやピペットはベタの飼育・繁殖には必需品ですね。

■ショーベタの繁殖方法
繁殖用として用意する水槽は30センチくらいの小型のものがおすすめです。60センチでも良いのですが、容器が広すぎたり深すぎたりするとうまくいかない場合があります。泡巣の構築、メスへの追尾によりオスは体力を消耗し、また、受精率も低くなります。オスはメスが産み落とした卵を口で拾って泡巣に詰め込むのですが、水槽が広すぎると卵を拾いこぼすことが多くなるようです。繁殖水槽は砂利を敷かないベアタンクが基本です。

フィルターは強い水流になるものを避け静かな作りにしましょう。水面が波立たず、稚魚を吸い込まないスポンジフィルターはおすすめです。照明はあまり明るくする必要はないので一灯式でも良いでしょう。ウォータースプライト、マツモ、アマゾンチチドメグサの仲間などの水草や、浮き草や人工物(果実を保護している網目状の発砲スチロールなど)を入れ、オスの泡巣構築の補助とします。少量のウィローモスを沈めておくと、ヒレが傷つきボロボロになり、時には産卵後に気絶したメスのクッションとなるので良いでしょう。また、稚魚のエサとなるインフゾリアの発生の促進ともなるので有効です。照明はオスが子育てするあいだは遠めから1灯、つけっぱなしにしておきます。急に真っ暗になる空間はストレスになることもあるようです。

泡巣を作れる性成熟したオスと抱卵したメスの個体を用意します。まずオスを繁殖水槽で飼育します。同時にメスは透明の産卵ケースに収容し、お見合いをさせるのです。(透明のセパレーターで仕切る方法も可)
オスがメスに向かってフレアリングをしてみせたり、泡巣を作り始めたら良い兆候です。泡巣の大きさが6センチほどになり準備が整ったら、いよいよオスとメスを一緒にしましょう。オスは泡巣の下でヒレをひろげ、メスに向かって求愛をします。メスは気に入ると泡巣の下まで来るようになります。オスはメスの体を巻くようにして抱きかかえ、抱卵、放精が行なわれます。ベタの卵は沈性卵であるため、水槽の底の方へ沈んでいきます。メスが(産卵後、ほぼ)気絶している間にも、オスはばらまかれた卵を口で拾い、泡巣に付着させる作業をします。この行動が何度も繰り返されます(30分~1時間くらい。卵の数は50~200個くらいです。)産卵後、メスはそっと掬いだし、元の産卵ケースへ戻します。オスはその後、泡巣を修復したり、落ちた卵を元に戻したりと子育てを一手に引き受けるのです。感動の場面の連続です!しっかり観察してください。
卵は水温26~28℃のとき2日でふ化します。ふ化した稚魚はまだ自由に泳ぐことができないため、沈んだ稚魚をオスが泡巣に戻す作業をします。稚魚たちは泡巣の中の空気を吸って生きていくのです。2~3日でヨークサック(卵黄)を使いきり、自由遊泳できるようになります。不眠不休で子育てをしたオスは、ここでようやく任務が終わるので、そっと掬いだし休ませてあげましょう。
ボロボロになったメスともども栄養価の高いエサを与え、回復させてあげると良いでしょう。稚魚はたいへん小さく、ふ化したてのブラインシュリンプが食べられる大きさに成長するのは、ふ化後4、5日目です。はじめは、逆にブラインシュリンプに食べられてしまうのではないか、という大きさです。それまでは水槽に発生しているインフゾリアか卵の黄身しか食べられないわけで、微生物の発生を促がしたり、水を浄化させる作用のあるPSBを入れる愛好家も多いです。この魔の一週間を乗り切ることがベタ繁殖の最大のポイントであります。
インフゾリアは、レタスやミルクを入れた別容器でわかす方法が知られていますが、忙しい現代人向きとは思えませんので、当欄としては、稚魚育成水槽にインフゾリアをわかす方法をおすすめします。PSBといっしょに、パウダー状のベビーフードを少量入れます。飼育水を少しだけ栄養化させるのです。実際に東南アジアの養殖ファームでは、ベビーフードをさらに細かく粉末状にしたものを初期飼料としているようです。また、屋外に水を汲み置き、グリーンウォーターを作っておき、その緑色の水をスポイトで注入する方法もあります。いずれにしても、会社や学校からは「ベタ惚れです」と言って早く帰宅し、初期飼料の段取りや、ブラインシュリンプのふ化に全力を注いでほしいのです。ブラインシュリンプでの育成は1ヶ月ほど続きます。その後はベビーフードやシクロプス、ディスカスハンバーグを小さくしてあげたものなどを与えて、栄養のバランスをとってほしいです。徐々に成長していく稚魚たちを1匹ずつわけていくのは、小競り合いをしてヒレを傷つける前からが良いでしょう。まずは次期親候補の個体を5~6匹残すようにしましょう。

オスがメスを巻くようにして抱き産卵が繰り広げられる様子はたいへん神秘的で美しい光景であります。その様子を観察するためにもぜひ、繁殖にチャレンジしてほしいところです。

子育てのあいだオスは、ほとんどエサを食べないで面倒を見ますが、子育てを終えたオスを水ごと別の容器に移すと、オスは見たことのないような、それはそれは大きなフンをします。子育てでフンをする暇がなかったのか、我が子のために水を汚したくなかったのか、人間ですら感心させられる場面です。
コリドラスを飼育しているアクアリストはかなり多いと思います。愛嬌のある生態にハマり、繁殖やコレクションをするキーパーから、飼育しやすい入門魚として、あるいは水槽のメンテナンスフィッシュとして、人気と地位が確立されています。今回は愛すべきキャラクター、コリドラスについて考えてみましょう。
■コリドラスを飼育するにあたって
コリドラスはナマズ目カリクティス科コリドラス亜科コリドラス属と分類されています。コリドラスという名前には、皮をかぶったナマズという意味があり、数百種にのぼるといわれる彼らは広く南米に分布します。掃除屋さんとしてのイメージが強い人も多いと思いますが、ナマズの仲間なのでたいへんな大食漢であります。まずは理想的な飼育環境から見ていきましょう。底モノともいわれる彼らは、底砂への依存度がとても高いです。底床の環境は常に清潔に保つことを心がけましょう。定期的に底床クリーナーによって泥抜き作業をしましょう。クリーナーを差したときにクリーナーの形が砂利に残ってしまうような環境は、汚れによって砂利が目詰まりしていることを示します。良好なコンディションをキープするためにも水かえのときには上澄みでなく砂利の中から積極的に汚れを取り除いてあげるようにします。底床面積はなるべく広くとってあげたいので、砂利が見えなくなるような本格的な水草レイアウト水槽や、ソイル系の底床は基本的に向きません。砂利は目の細かいものが良いでしょう。粗目の砂利は3対あるヒゲを傷つけることもありますし、細目のほうがパワフルにエサを探る様子が観察できます。ナマズにとってヒゲはきわめて重要な器官で、粗目の砂利や詰まった底床で飼育を続けますと、とがっていなければならないヒゲの先端が丸みを帯び、ときには短くなってしまい、コンディションを崩す原因となります。砂利をいっさい敷かないベアタンクでの飼育例もありますが、生息環境の再現という意味をこめて砂利の使用をおすすめしたいところです。原産地の水質は地域によってすこし異なり、弱酸性から弱アルカリ性を示しますが、Ph7.0の中性を目安に管理をしましょう。水温は低温を好む一部の高級コリドラスもいますが、24から26℃でOKです。入手したときに水温が何度であったかを確認するとよいでしょう。日本の冬がシーズン最盛期となるコリドラスにはヒーターなどの保温器具が欠かせませんが、主流である水槽用のヒーターにはぜひカバーを取り付けてあげたいものです。人の手で触っても熱いと感じる通電部に彼らがのってしまうことも少なくなく、ヒーターカバーは必須アイテムといえます。時折、縦に取り付けられているヒーターを見かけますが、危険です。砂利に埋めることも基本的にはしないほうが良いでしょう。ヒーターは必ず横に寝かせて使用します。飼育スタイルはバラエティに富んでいて良いでしょう。趣味的要素がたくさん入ってくるほうが楽しいです。ビギナーによる混泳水槽からマニアックでディープな世界のスタイルまで、百人百様と思われます。適度な水流をつくるためのパワーヘッドなど設備の選択、エサの選択と、観察しやすいレイアウトなどなど、飼育していてこれほどバラエティ豊かに楽しめる魚種もないのではないかと感じるところであります。
■コリドラスのエサ
コリドラスは雑食性がつよく、何でもよく食べます。掃除屋さんとして有名な彼らでありますが、下に落ちるほどの量のフレークフードや顆粒状フードを投与することは水槽環境の悪化に直結します。イトミミズ、赤虫、低層魚用の沈降性タブレットフードなどをバランス良く給餌しましょう。1回に与えるタブレットフードの量は、1時間ほどで食べきる量(個数)とします。匹数によって見きわめが必要です。十分摂餌できた個体の腹部は膨らんで見えます。多くのメーカーからリリースされているタブレットフードは、各種ビタミン類が配合されています。体表粘膜に影響するビタミンA、炭水化物の代謝に関与するビタミンB1、タンパク質と結合して呼吸回路に関与するビタミンB2、骨格の形成に関与するビタミンC、性機能に関与するビタミンEなどであります。水槽という限られた空間で健康に生活してもらうためにも、マルチビタミン配合フードの使用をおすすめしたいところです。いつも同じポイントにエサを落としてあげると、魚たちが集まってきて愛嬌たっぷりに食べる様子が観察できます。コリドラスやプレコ用のタブレットフードはおいしいらしく、混泳魚がもっていってしまうこともしばしば観察できます。また、自由遊泳開始まもない稚魚が群がるように摂餌できる構造のものもあり、便利に使用しているキーパーも多いのです。
■コリドラスの繁殖
パレアタス、アエネウスなどの入門種や、パンダ、ステルバイなどの人気種は、水槽内で繁殖させることが可能で、ぜひとも挑戦してみてほしいです。産卵用水槽として、45cmから60cmケースを用意する方法と、卵を取り出し人工孵化させるために簡単な設備の小さいプラケースを用意する方法が知られています。メス1匹に対してオスを2~3匹の組み合わせでの成功例が多いです。成熟したメスはまるまる太ってくるのに対し、オスはスレンダーで容易に見分けがつくようになります。オスがメスを追尾するようになるのが、産卵に至る兆候です。メスの前でディスプレイするオスの様子を観察できることもあります。やがてオスはメスの前で横たわるような格好になります。メスはオスの排泄口に自分の口を近づけて放出された精子を口に含むことが知られています。雌雄がアルファベットのTの字の格好になることからTポジションとよばれています。精子は瞬時にメスの体内を通過し、腹ビレに挟みこまれた卵に受精するのです。高い受精率を保つためにこのような神秘的な産卵方法が選択されたのでありましょう。この作業を繰り返し、50個から100個ほどの卵を産みます。卵はガラス面やアマゾンソードなどの水草に産みつけられ、付着することが多いです。産卵が終了したら、親を移動させ稚魚育成水槽とするか、卵を親指の腹でそっとプラケースに移し、エアレーションします。水温25℃のとき2~3日でふ化します。ふ化後1~2日で腹部の卵黄の栄養を吸収し、自由遊泳に入ります。泳ぎ出した稚魚にはふ化したてのブラインシュリンプや稚魚用フードをスポイトで与えます。2ヶ月で2cmを超えるほどの大きさに育てましょう。その頃にはすっかりコリドラスの形になっていて、たいへんかわいいものです。
■コレクション性について
毎年といってよいほど次から次へと新しいコリドラスが紹介されてきています。まだ名前が決まっていないspモノ(species:~の1種)も多いです。どれも魅力的な品種で目移りすることでありましょう。ショップで目と目が合ってしまったら、もう飼育するしかありません。すでにいっぱいで飼育しきれないのにもう1匹、さらに2匹と、欲しくなってしまう魅力があるのです。コリドラスの誘惑に負け、自宅をコリドラスの館にしてしまうアクアリストも少なくありません。高級コリドラス、あるいは珍コリドラスというジャンルも存在し、コレクター心やマニア心をくすぐっています。個性的なゴッセイ、夢にまで見たボエセマニー、素晴らしいフォルムのパラレルス、俺のアッシャー・・。自慢のコリドラスとなるでしょう。いろいろな種類に挑戦してみてほしいです。
魅力あふれるコリドラスを脇役としてではなく、堂々主役として、本腰を入れて飼育してみてはいかがでしょうか?
水は、フィルター内を速すぎず、遅すぎない速度で流れなくてはなりません。
水流が速すぎると、微生物による分解が十分に行われません。
遅すぎると、生物ろ過の段階で酸素が不足し、ろ過バクテリアが死滅し、油膜の原因となったりします。
ろ過材の目づまり、ホースや配管の折れ・詰まり、プレフィルターとして取り付けたストレーナースポンジの目づまりなどは、こまめにチェックしましょう。
水流調節機能のあるものについては、魚の種類、大きさ、匹数などにもよりますが、
飼育者自身が良好なポイントを探らなくてはなりません。
フィルターは魚を飼育する上で最も重要な器具のひとつであり、汚れたまま使用していると、まったく機能を果たしませんので、定期的なメンテナンスは欠かすことができません。
また、エアレーションは、ろ過バクテリアを活性化させるので行うにこしたことはありません。
例えば一般的な60cm水槽に多く用いられる上部式フィルターのポンプは、1時間におよそ600リットルの水を流通させます。60リットルの飼育水が1時間に10回転する計算になります。
外部式フィルターを見てみると、1時間に440リットルのもの、500リットルのものなどが60cm用として販売されています。もちろんそれぞれのろ過槽の容積も異なりますね。
多くのメーカーが競って製品をリリースしていますので、
価格、耐久性、デザイン、メンテナンスのしやすさなどをチェックしてほしいです。

店長おすすめのろ過材として、Bioロカリッチやシポラックスがあります。
まずは使ってみて、従来との違いや製品の性能を実感していただけたら良いと思います。
大事なポイント
ろ過材は「正しく使う」こと
定期的に清掃すること(飼育水をバケツにとり、その水で洗ってください。水道はだめです。)
定期的に交換すること
自分の水槽に合った、効果や性能を確認できる製品に出会うこと
です。