ピラニアを飼育してみましょう!

アマゾンの猛魚・ピラニア。いろいろな魚を飼育し、経験を積むと一度は飼育してみたくなるのではなかろうか。豪快な捕食シーン、数ある肉食魚のなかでもズバ抜けた存在感、やっぱりトップスターである。今日は生き抜く術をその牙に宿した魚・ピラニアについて考えてみよう。

■猛魚ピラニア
現地で生活を営む人々は、母なる大河アマゾンの恵みに生活の大部分を頼っている。日本に暮らす私たちにとって珍しく、高価な魚たちも市場に並べられ、食料として売られている。食べるところが多く美味とされるコロソマ、串にささったプロキロダス、ロープでくくられ保存食となったピラルクに混ざって、ピラニアの干物が並んでいる。愛好家が見たら思わずのけぞってしまう光景であろう。
一瞬にして牛やカピパラを白骨にしてしまうアマゾンの代名詞ピラニアも、飼育下において生まれたばかりの段階ではブラインシュリンプを食べる。(日本では東南アジアで養殖されたピラニアナッテリーが数多く流通しています。)10日から2週間ほどで刻んだイトメ、ミジンコに移行する。アカムシを食べるようになる頃には共食いも起こる。特に眼球はおいしいらしく、片方の眼球を欠損してしまっている個体にも出会う。ピラニアナッテリーは生後3ヶ月もすると、1.5cm~2cmほどになり、体側にスポットの入ったかわいい姿になってくる。メダカ、小赤、小和金などの魚が大好きである。歯の鋭さを実感できるのはやはり給餌の時で、金魚が一瞬で真っ二つに切断されるシーンもある(金魚は生きていたりします・・)。ピラニアの口の大きさに合わせた魚をエサとして選んであげたい。ひと口で飲み込んでくれたほうが水槽の汚れが少ない。大きすぎるエサは食いちぎって食べるため、鱗や内臓が水槽内に飛散し、水を悪くする原因となる。(もっともそれが見たい人も多いのだが・・・)。小赤にもいくつかサイズがあり、お店で「大きめの小赤」とか、「小さめの小赤」などといった注文をする愛好家も多い。人工飼料でいちばん餌付きやすいのはクリルなどの乾燥エビと思われる。大型魚用のペレットに慣らすのは根気が要ることもあるかと思う。コオロギなどの昆虫は好みが分かれるらしく、食べる個体と食べない個体がいる。いずれにしても給餌のときに指が水槽に入らない与え方をしよう。危ないし、痛い。

■ピラニアの飼育・管理
ピラニアは南米カラシンの仲間であるから、水温24~28℃、pH6.0~6.9の弱酸性の軟水が基本の水質レンジとなる。古くなった水は泳ぎのキレが鈍ってくるため、週に一度の水かえは欠かせない。取り替える水量は水槽の三分の一から二分の一でよいだろう。
唯一養殖がなされているナッテリー種は複数飼育の成功例が多く見られるが、ほかの種は単独飼育をおすすめする。キズつけることなく順調に成長させて、ピラニア独特の渋みのある美しさや鱗の輝き、ダイナミックな捕食シーンを楽しんでほしい。
水かえ作業で水槽の内側をみがく際は、セパレーターを使用する。半分に仕切って魚のいない方をまずきれいにしてから、残りの半分の作業に移る。基本的に直に手を入れるのは危険である。複数飼育のナッテリー水槽などには、長い柄のついたクリーナーの使用が良いだろう。意外と臆病な性格で、飼育開始当初などは環境を警戒し、奥のほうでじっとしていたり、物音や人影にびっくりしたりする場面も少なくない。水槽内を管理するときは、ピラニアから目を離さず、彼らの体にキズをつけたりしないようにしてあげたい。臆病な反面、瞬発力はものすごく、泳ぎ始めのスピードはとても速いのだ。ぶつかったり、すれたりといったことには細心の注意が必要だ。フィルターの吸水口やヒーターのコードなどは一角にまとめて、コーナーガードした水槽も多く見られる。エサの容器や人や音に慣れるオスカーなどとは違って、警戒しながらも彼らの目はこちらに向かって光っている。オスカーのように飼い主に媚びることもない。水槽からすくい上げるときや、管理のときの出血事件はよく耳にする。実際輸送されるときには、穴の開いたプラケースごとビニールパックされたり、二重、三重ビニールの間にバックスクリーンを入れたものなどが使われたりしている。
底砂は底面がかくれる量を敷く。ベアタンクだと、光の反射を嫌がる素振りを見せ、落ち着かないようだ。魚の赤を引き立ててくれる赤系の砂や、銀の鱗の輝きを美しくみせる明るめの砂を用意してあげよう。厚く敷きすぎると想像以上に大きいフンが目詰まりしやすいので管理が大変になる。蛍光灯などの光線も色によって同じ個体が異なる印象をうけるので、好みのものを選んでほしい。

■ピラニアナッテリーの産卵
ピラニアの多くは生後一年半から二年で成熟する。オスの成魚はメスに比べて黒みがかっている。抱卵したメスは腹部が膨らんできて赤みを増す。グループの中からぺアになった二匹は、あたかもシクリッドのペアのように他の個体を追い払い、これから産卵しようとする場所にテリトリー(縄張り)を作る。求愛行動、ディスプレイは、体が大きいだけにダイナミックである。顔やエラ蓋、体側にキズをつけながら求愛行動をとり、産卵態勢に入る。ペアがぴったりと体を寄せ合い、全身をブルブルッと震わせて放卵、放精が行なわれる。三時間ほどの間に数百個(産卵経験のある大きいメスは千個以上)の卵を産む。4~5日の間は卵のそばを離れず守るしぐさを見せるが、通常、養殖ではここで卵と親とを別々にする。卵には水生細菌防止の意味でメチレンブルーをうっすらと入れ、強めのエアレーションを施すファームが多い。水温28℃のとき2日ないし3日でふ化する。ふ化後3日間は卵黄をつけたままじっと横たわっていて、吸収を終えると自由遊泳に入る。泳ぎ始めたらブラインシュリンプやベビーフードを与える。

■自分だけの自慢の1匹を飼育しよう。
以下に紹介するピラニアはワイルド個体である。地球の裏側で採集された貴重な個体、大事にしてあげたいものだ。
★ラインノーズ・ピラニア。下あごから背ビレにかけて太いラインが入る。ピラニア界では話題となった種である。小魚を好み、25cm~30cmほどになる。成長するにつれて体高がでてきて背が盛り上がってくるカッコイイ種である。バイオレットラインノーズピラニアは人気が高い。正面から見ると意外な一面が観察できる。トカンチンス川産とされる。
★スーパーノタートゥス・ピラニア。40cmに達する大型種。学名でピラニア・ヒュメラリスとも呼ばれる。シングー川産。他種に比べて眼が大きい。エラ蓋は赤く染まり、その後方に黒いスポットが現れる。成長につれ背ビレの先がフィラメント状に伸び美しい。眼はおとなしそうだが、エサの捕り方は凶暴な印象を受ける。
★パンタナル・イエローピラニア。各ヒレ、体が黄色く色づき、美しいピラニアである。古い水になりすぎると、色の鮮やかさが落ちるので、定期的な水かえが欠かせない。全長20cm以上になる。
★ピラニア・ピラヤ。40cm以上になる大型種。サンフランシスコ川産。体側がオレンジから朱色に染まる美種である。脂ビレに不完全な条をもつのが特徴。眼球はカメレオンばりによく動き、絶えずこちらが観察されているかのような印象を受ける。強そうなアゴをしている。単独飼育でじっくり飼い込んでほしい種である。
★ピラニア・デンティクラトゥス。10年ほど前まではよく見かけたのだが、近年はあまり出会う機会が減ってしまった。グループのなかでは渋い印象を受ける。大切に飼育してあげたい。
★サンフランシスコ・ホワイトピラニア。スレンダーな体型が魅力の美種である。30cmほどになる。若い個体は全身に入る黒いスポットが美しい。
★ダイヤモンド・ピラニア。赤い眼と銀色に輝くウロコが魅力の美しい種である。ダテにダイヤモンドと名づけられてはいない。はっきり言って凶暴である。取り扱いにはとりわけ注意が必要である。
ほかにも採集地のローカルネームがついている個体も多く流通している。遠くアマゾンに思いを馳せ、大切に飼育してあげよう。

(鉄則1)ピラニアからは目を離さない。
ピラニアはプライドが高い。こちらが観察されているのかもしれない。管理には細心の注意を払おう。
(鉄則2)エサ選びに気を配ろう。
エサとなる魚のサイズや、人工飼料の鮮度に注意してあげよう。与えるときにも注意が必要だ。
(鉄則3)自慢の1匹を育て上げよう。
ピラニアも家族。立派に育て上げよう。